斉次Besov空間の補間理論
こんにちは。ひよこてんぷらです。お久しぶりです。
最近かなり忙しくてずっと更新を放置してしまいました。この間に論文を書いたり研究集会で発表をしたりといろいろやっていました。今のところは今書いている4本目の論文がだいぶ落ち着いてきまして、研究集会の予定もないので暇です。
しかし論文を書いているうちに新たな疑問がわいてきたので、新しい論文のネタにできたらいいなと思っています。そのためにChemin-Lerner空間 というのを勉強する必要があるのですが、いかんせん参考になる文献が少なく、困っています……何か参考になりそうなものをご存じの方がいればご教授願えればと思います。
さて、今回は補間について考えていきます。これまで研究で斉次Besov空間 をよく扱ってきたのですが、今回はより基本的な内容を理解したいと思いますので、ここで勉強していきたいと思います。今回の目的は、任意の および また に対して次の実補間関係
\begin{align} ( \dot{B}_{p,q_0}^{s_0},\dot{B}_{p,q_1}^{s_1} )_{\theta,q}=\dot{B}_{p,q}^{(1-\theta)s_0+\theta s_1} \end{align}
が成立することを示すことです。斉次Besov空間の定義はざっくりと
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,q}^s} &= \| \{2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p}\}_{j \in \mathbb{Z}} \|_{l^q} \\ &= \left\{ \sum_{j \in \mathbb{Z}} (2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p})^q \right\}^{1/q} \end{align}
が有限になるような超関数 の空間としておきましょう。 なら と読み替えてください。
さて、まずは次を示しましょう。
(命題 A) 任意の および に対して が成立する。
これを示すには がそれぞれ関数 および によって と分解されることを示せばよいです。これはすぐに分かり、実際Littlewood-Paley分解によって
\begin{align} f=\sum_{j \in \mathbb{Z}}(\varphi_j*f) \end{align}
と分解されますから、例えば
\begin{align} f=\sum_{j \ge 0}(\varphi_j*f)+\sum_{j \le -1}(\varphi_j*f)=f_0+f_1 \end{align}
とすればよいですね。さて、 ならば が成立することに注意すれば
\begin{align} \varphi_k*f_0 &=\varphi_k*\left\{ \sum_{j \ge 0}(\varphi_j*f) \right\} \\ &=\sum_{j \ge 0, |k-j| \le 1}(\varphi_k*\varphi_j*f) \end{align}
となるので
\begin{align} \sum_{k \in \mathbb{Z}}(2^{s_0k}\|\varphi_k*f_0\|_{L^p})^{q_0} \le \sum_{k \in \mathbb{Z}}\left(2^{s_0k}\sum_{j \ge 0, |k-j| \le 1}\|\varphi_k*\varphi_j*f\|_{L^p}\right)^{q_0} \end{align}
と計算できます。ここで の条件から ならば右辺は消えてしまいますから、 についてだけ考えればよいです。またこのとき の和の項について
\begin{align} \|\varphi_k*\varphi_j*f\|_{L^p} \le \|\varphi\|_{L^1}\|\varphi_k*f\|_{L^p} \end{align}
が成立します。これはYoungの畳み込みの不等式を用いました。また は normで見ると に関して一様有界となることが従うので、結局和の部分は によらないわけです。さらに和は高々3つしか出てきませんから、
\begin{align} \sum_{j \ge 0, |k-j| \le 1}\|\varphi_k*\varphi_j*f\|_{L^p} \le 3\|\varphi\|_{L^1}\|\varphi_k*f\|_{L^p} \end{align}
となりますね。したがって上の総和は
\begin{align} \sum_{k \in \mathbb{Z}}(2^{s_0k}\|\varphi_k*f_0\|_{L^p})^{q_0} &\le \sum_{k \ge -1}(2^{s_0k} \times 3\|\varphi\|_{L^1}\|\varphi_k*f\|_{L^p} )^{q_0} \\ &= (3\|\varphi\|_{L^1})^{q_0} \sum_{k \ge -1}(2^{s_0k}\|\varphi_k*f\|_{L^p} )^{q_0} \end{align}
と評価できます。さて仮定から および ですから、和の中身を
\begin{align} (2^{s_0k}\|\varphi_k*f\|_{L^p})^{q_0} \le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^s}^{q_0} \times 2^{(s_0-s)kq_0} \end{align}
とでもしてやればOKですね。実際 は正方向に大きくなるので、正方向の無限級数を考えるわけですが、 のべきが であることに注意すれば級数は収束します。ゆえに
\begin{align} \|f_0\|_{\dot{B}_{p,q_0}^{s_0}} \le 3\|\varphi\|_{L^1}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^s}\left( \sum_{k \ge -1} 2^{(s_0-s)kq_0} \right)^{1/q_0} \lt \infty \end{align}
より です。 の場合での計算でしたが でももちろん大丈夫ですね。さて次は についてですが、この場合は
\begin{align} f_1=\sum_{j \le -1}(\varphi_j*f) \end{align}
より同様に考えれば は負方向に大きくなり、負方向の無限級数が出てきますが、現れるべきも となりやはり収束します。ゆえにOKです。以上のことから任意の は関数 および によって と分解されることが分かり、 が示されました!!
では次にこちらを示しましょう。
(命題 B) 任意の および に対して が成立する。
こちらはどうするかというと、まず
\begin{align} \dot{B}_{p,q_0}^{s_0} \cap \dot{B}_{p,q_1}^{s_1} \subset \dot{B}_{p,\infty}^{s_0} \cap \dot{B}_{p,\infty}^{s_1} , \quad \dot{B}_{p,1}^s \subset \dot{B}_{p,q}^s \end{align}
という関係に注目し、 の証明を目指します。また、 を と定めると、すぐに および が分かります。いわゆる指数の補間関係ですね。
さて をとり、さっそく のnormを計算してみましょう。適当な をとり
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,1}^s}=\sum_{j \le N-1}2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p}+\sum_{j \ge N}2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p} \end{align}
と分けておきます。もちろんどんな でも上式は成立しますから、あとから自由に決めなおしてもOKですね。ここで という関係に着目しましょう。これを用いるとそれぞれの級数に対して
\begin{align} 2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p} &\le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}} \times 2^{(s_1-s_0)\theta j} \\ 2^{sj}\|\varphi_j*f\|_{L^p} &\le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}} \times 2^{-(s_1-s_0)(1-\theta) j} \end{align}
と評価できますから、
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,1}^s} &\le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}\sum_{j \le N-1}2^{(s_1-s_0)\theta j}+\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\sum_{j \ge N}2^{-(s_1-s_0)(1-\theta) j} \\ &=\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}\times \frac{2^{N(s_1-s_0)\theta}}{2^{(s_1-s_0)\theta}-1}+\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\times \frac{2^{-N(s_1-s_0)(1-\theta)}}{1-2^{-(s_1-s_0)(1-\theta)}} \end{align}
が成立しますね。最後の等式は無限級数を計算した結果です。 という関係からそれぞれの級数が収束することに注意しましょう。
さて、この時点で命題の証明は終了ですが、せっかくですのでもう少しちゃんと評価してみましょう。初めに選んだ はなんでもよかったので、ここで
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{-1} \le 2^{N(s_1-s_0)} \le 2^{s_1-s_0}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{-1} \end{align}
を満たすように取りましょう。とりあえずこのような が取れるというのはよいでしょうか。実際にどんな が与えられても、 に注意すれば十分大きな をとって が成立するようにできるわけです。さて、ここでこのような条件を満たす最小の を考えると、 では成立しないので、 となります。これより が成立しますね。ゆえに上式を満たすような が存在します。さて、このように取れば
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,1}^s} &\le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}\times \frac{2^{N(s_1-s_0)\theta}}{2^{(s_1-s_0)\theta}-1}+\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\times \frac{2^{-N(s_1-s_0)(1-\theta)}}{1-2^{-(s_1-s_0)(1-\theta)}} \\ &\le \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}\times \frac{(2^{s_1-s_0}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{-1})^{\theta}}{2^{(s_1-s_0)\theta}-1} \\ &+\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\times \frac{(\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{-1})^{-(1-\theta)}}{1-2^{-(s_1-s_0)(1-\theta)}} \\ &= \left(\frac{1}{1-2^{-(s_1-s_0)\theta}}+\frac{1}{1-2^{-(s_1-s_0)(1-\theta)}}\right)\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{1-\theta}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}^{\theta} \end{align}
とできますね。最後にもう少し整理しておきましょうか。 に対して次の関数
\begin{align} f(x)=\frac{ax}{(1+x)(1-2^{-ax})} , \quad x \gt 0 \end{align}
を考えます。微分すると簡単な計算で
\begin{align} f'(x)&=\frac{a2^{-ax}g(x)}{(1+x)^2(1-2^{-ax})^2} \\ g(x)&=2^{ax}-ax(1+x)\log 2 -1 \end{align}
となることが分かりますが、ここで に注意すれば の範囲では となるような がただ一つ存在します。ゆえに は では単調減少、 では単調増加です。これと
\begin{align} \lim_{x \to +0}g(x)=0 , \quad \lim_{x \to \infty}g(x)=\infty \end{align}
を合わせれば再び なる がただ一つ存在することが従います。したがって では であり、 では です。そういうわけで の上限は もしくは のときに与えられます。さて、
\begin{align} \lim_{x \to \infty}f(x)=a\lim_{x \to \infty} \frac{1}{1-2^{-ax}}=a \end{align}
および
\begin{align} \lim_{x \to +0}f(x)&=\lim_{x \to +0}\frac{ax}{1-2^{-ax}}=-a\lim_{x \to +0}\frac{x-0}{2^{-ax}-2^0} \\ &=\frac{-a}{\partial_x(2^{-ax})|_{x=0}} =\frac{-a}{-a2^{-ax}\log 2|_{x=0}}=\frac{1}{\log 2} \end{align}
ですから、 より が上限(最大値)となります。ゆえに
\begin{align} \frac{ax}{(1+x)(1-2^{-ax})} \le \frac{1}{\log 2} \end{align}
であり、 および を考えれば
\begin{align} \frac{1}{1-2^{-(s_1-s_0)\theta}} &\le \frac{1}{\log 2}\left( 1+\frac{1}{s_1-s_0} \right)\frac{1}{\theta} \\ \frac{1}{1-2^{-(s_1-s_0)(1-\theta})} &\le \frac{1}{\log 2}\left( 1+\frac{1}{s_1-s_0} \right)\frac{1}{1-\theta}\end{align}
となります。したがって評価式は
\begin{align} \|f\|_{\dot{B}_{p,1}^s} \le \frac{1}{\log 2}\left( 1+\frac{1}{s_1-s_0} \right)\left(\frac{1}{\theta}+\frac{1}{1-\theta}\right) \|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_0}}^{1-\theta}\|f\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{s_1}}^{\theta} \end{align}
となりました。これで証明終了としましょう。なお、この不等式はBahouri-Chemin-DanchinのProposition 2.22に対応したものです。
さて、命題 Aおよび 命題 Bによって
\begin{align} \dot{B}_{p,q_0}^{s_0}\cap \dot{B}_{p,q_1}^{s_1} \subset \dot{B}_{p,q}^s \subset \dot{B}_{p,q_0}^{s_0}+\dot{B}_{p,q_1}^{s_1} \end{align}
が示されましたが、これは実補間を実行する上で前提となる仮定です。つまり空間 および の実補間空間 は
\begin{align} X \cap Y \subset (X,Y)_{\theta,q} \subset X+Y \end{align}
を満たすので、
\begin{align} ( \dot{B}_{p,q_0}^{s_0},\dot{B}_{p,q_1}^{s_1} )_{\theta,q}=\dot{B}_{p,q}^{(1-\theta)s_0+\theta s_1} \end{align}
を示す際には少なくともいま示した関係は成立しなければならない、ということです。今回はこれを確かめました。さて、少し長くなってしまいましたので、次回で実補間の関係式を示しましょう!!よろしくお願いします。