Stokes systemを調べよう!!

こんにちは。ひよこてんぷらです。前にはオンライン授業がどんな感じかドキドキとお話ししましたが、あっという間に慣れてしまいました。というか、オンラインという環境、寝坊しても大丈夫なので(リアルタイム授業でなく録画のオンデマンド視聴形式)とても自分に合っていると思います。とても。

 

さて、勉強の進捗はといいますと、前にお話しした内容によりますとNavier Stokes方程式の論文を読むための準備をしていたという段階でした。

 

sushitemple.hatenablog.jp

 

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そこでStokes作用素の性質を調べたいのですが、そのためにはStokes systemの解析が必要です。いわゆる解の正則性について調べたいのですが、これがまあなんと大変なものだったのでとっっっっっても苦労しました。実に1つの定理とその周辺の補題の証明に3週間ほどかけるなど……しかもぶっちゃけ形自体は出来上がっているようにも見えますがあまり分かっていないところも多いので修正しつつ完成を目指したいと思います。特に最後のほうの正則性の証明には自信がありません……証明の参考はSohr"The Navier-Stokes Equations"ですが、かなり簡素にまとまっていたため自分で証明を掘り起こすのがめちゃ大変でした。

 

では今回もpdfを載せておきます。100ページ越えのボリュームです。

 

Stokes_system.pdf

 

今回の議論はとっても複雑で難しいので何から話すべきか分かりませんので、まあ適当にかいつまみながら説明します。

 

もともと調べたいのはStokes作用素の性質ですが、この作用素はStokes systemと非常に密接な関係がありますのでこれを調べたいです。Stokes systemとは、n \ge 2 とし \Omega \subset \mathbb{R}^n をdomainとするとき f を既知関数、u,p を未知関数とする次の方程式系

\begin{align}\left\{\begin{array}{l} -\Delta u+\nabla p=f \\ \mathrm{div}u=0 \\ u|_{\partial \Omega}=0 \end{array}\right.\end{align}

のことを指します。さて、今回示したい目標は次の定理です。

 

n \ge 2 とし  \Omega \subset \mathbb{R}^n をuniform C^2 domainであって \Omega \neq \mathbb{R}^n とします。また

\begin{align} \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n = \left\{ f \in \{C_0^{\infty}(\Omega)\}^n \ | \ \mathrm{div}f=0 \right\} \end{align}

\begin{align} \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n = \overline{\{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n}^{\| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}}} \end{align}

とします。f \in \{L^2(\Omega)\}^n に対して u \in \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n \cap \{L^2(\Omega)\}^n , \ p \in L_{\mathrm{loc}}^2(\Omega)

\begin{align} -\Delta u+\nabla p=f \end{align}

を満たすとき、u \in \{H^2(\Omega)\}^n , \ p \in L_{\mathrm{loc}}^2(\overline{\Omega}) , \ \nabla p \in \{L^2(\Omega)\}^n かつ正の定数 C= C(\Omega) が存在して

\begin{align} \|\nabla^2 u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^3}} = \left( \sum_{i,j,k=1}^n \|D_iD_ju_k\|_{L^2(\Omega)}^2 \right)^{\frac{1}{2}} \end{align}

に対して

\begin{align} \|\nabla^2 u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^3}}+\|\nabla p\|_{\{L^2(\Omega)\}^n} \le C\left( \|f\|_{\{L^2(\Omega)\}^n}+\|\nabla u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^2}}+\|u\|_{\{L^2(\Omega)\}^n} \right) \end{align}

が成立します。

 

さて、いろいろ説明すべき点はあると思いますが、これが解の正則性というのは、ざっくりといえば1回しか微分できない関数がStokes systemを満たす(より正確にはStokes systemの弱解とよばれるもの)ならば実は2回微分できるという感じです。ただこれには領域の滑らかさが重要であって、今回はuniform C^2 domainとしています。要するに領域の境界付近が2回微分可能なくらい滑らかということです。uniformというのは一様性のことですが、とりあえず領域が有界なら一様性を満たします。

 

さて、これを示すのには何が必要か?ということを考えますと、実はいろんな道具が必要になります。

 

先に作戦を話しましょう。解の正則性を示すためには、次のステップで示します。まず初めに円柱領域での解の正則性を示します。正則性を示すのには差分商というテクニックで示します。次に、円柱領域を変形させて「蓋」と「底」の2平面を C^2 級関数に取り換えた場合での領域における正則性を示します。これには変数変換を用いて円柱領域の場合に帰着させる、という作戦です。最後に一般の領域ですが、これには 1 の分割とよばれるテクニックを用います。ざっくり言えば領域を分割したときにその分割に対応する滑らかな関数があって、しかもそれらの関数の総和がぴったり恒等的に 1 になるという強力な定理です。これによって境界をうまく分割することで先に示した円柱領域での結果を使います。

 

さらに作戦会議を続けます。まず差分商について簡単に説明しますと、次の定理です。

 

n \ge 2 とし \Omega \subset \mathbb{R}^n をdomainとします。x= (x',x_n) , \ x' = (x_1,\ldots , x_{n-1}) などと書き,

\begin{align} Q_{\alpha} = \{(x',x_n) \in \mathbb{R}^n \ | \ -\alpha \le x_n \le 0 , \ |x'| \le \alpha\} \end{align}

とします。u \in L^2(\Omega) および正の定数で \beta\alpha より大きいとするとき

\begin{align} \mathrm{supp}u \subset Q_{\alpha} , \ \ \ Q_{\beta} \subset \overline{\Omega} \end{align}

とします。このとき次は同値になります。

 

(A)

1 \le {}^{\forall}i \le n-1 に対して D_iu \in L^2(Q_{\beta}) \subset L^2(\Omega) が成立します。

 

(B)

正の定数 C = C(\Omega) が存在して {}^{\forall}\varphi \in C_0^{\infty}(Q_{\beta}^{\circ}) , \ 1 \le {}^{\forall}i \le n-1 に対して

\begin{align} \left| \int_{Q_{\beta}} uD_i\varphi dx \right| \le C\|\varphi\|_{L^2(Q_{\beta})} \end{align}

が成立します。

 

(C)

\begin{align} D^{\delta}u(x',x_n)=\frac{u(x'+\delta,x_n)-u(x',x_n)}{|\delta|} \ \ \ {}^{\forall}x \in Q_{\alpha} \end{align}

とします。正の定数 C=C(\Omega) が存在して {}^{\forall}\delta \in \mathbb{R}^{n-1}|\delta| が正かつ \beta-\alpha より小さいならば

\begin{align} \|D^{\delta}u\|_{L^2(Q_{\alpha})} \le C \end{align}

が成立します。

 

ここで大事なのは(C)ならば(A)であるということです。(C)で定義される D^{\delta} が差分商のことですが、このnormが一様に抑えられるならば実は微分可能、すなわち正則性がアップするということです。これを用いることで解の正則性を示していきます。

 

では次に、非斉次形の解析について考えます。先に述べたようにStokes systemは

\begin{align}\left\{\begin{array}{l} -\Delta u+\nabla p=f \\ \mathrm{div}u=0 \\ u|_{\partial \Omega}=0 \end{array}\right.\end{align}

と表されますが、このうちの \mathrm{div}u=0 という部分は斉次形と呼ばれます。非斉次形はこの部分がある関数 g を用いて \mathrm{div}u=g と表されるような場合を指します。Stokes systemは斉次形ですからわざわざ非斉次形を調べる必要はないだろうと思われますが、実はこの解析が先ほどの正則性の証明に必要になります。これがなぜかというと、円柱領域の「蓋」と「底」を C^2 級関数に取り換えるとき、変数変換によって領域を普通の円柱領域に戻すのですが、この際の変数変換によって微分方程式が変化するからです。したがって斉次形 \mathrm{div}u=0 を変数変換によって変換することによって非斉次形 \mathrm{div}u=g に帰着されるということです。さて、では非斉次形のStokes systemはどのように解析すればよいでしょうか。

 

これには次の定理を用います。

 

n \ge 2 とし \Omega \subset \mathbb{R}^n をbounded Lipschitz domainとします。

\begin{align} \int_{\Omega}g dx=0 \end{align}

なる {}^{\forall}g \in L^2(\Omega) に対して {}^{\exists}v \in \{H_0^1(\Omega)\}^n および正の定数 C = C(\Omega) が存在して

\begin{align} \mathrm{div}v=g , \ \ \ \|\nabla v\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^2}} \le C\|g\|_{L^2(\Omega)} \end{align}

が成立します。

 

これの証明には関数解析的な方法を用います。勾配と発散が共役作用素の関係にあることから閉値域の定理などを用いて全射性を示し、norm評価は発散の核による商空間を構成するなどして示します。難しいです。

 

さてこれを用いて非斉次形の解析を行います。これを用いると斉次形の解析方法に帰着できます。

\begin{align}\left\{\begin{array}{l} -\Delta u+\nabla p=f \\ \mathrm{div}u=g \\ u|_{\partial \Omega}=0 \end{array}\right.\end{align}

に対してGaussの発散定理を用いると

\begin{align} \int_{\Omega} gdx = \int_{\Omega} \mathrm{div} u dx = \int_{\partial \Omega} u dx = 0 \end{align}

を得ますから、先の定理が使えて {}^{\exists}v \in \{H_0^1(\Omega)\}^n であって \mathrm{div}v=g と表せます。したがって

\begin{align} \mathrm{div}(u-v)=g-g=0 \end{align}

であって、

\begin{align} -\Delta (u-v)+\nabla p=-\Delta u+\nabla p+\Delta v=f+\Delta v \end{align}

を得ます。したがってStokes systemは

\begin{align}\left\{\begin{array}{l} -\Delta (u-v)+\nabla p=f+\Delta v \\ \mathrm{div}(u-v)=0 \\ (u-v)|_{\partial \Omega}=0 \end{array}\right.\end{align}

と表せるわけです。つまり f の項を f+\Delta v と置き換えれば非斉次形の場合も斉次形に帰着できるというわけです。

 

さて、このくらいお話しすれば解の正則性理論については大体方針が定まったわけです。あとはこの作戦にしたがって計算です。しかしいま紹介した作戦も簡単に話したにすぎず、実際の計算はなかなか過酷なものです。実際の正則性を示す際にも変数変換をすると言いましたが、この変数変換はなかなかめんどくさいです。しかも最終的には微分方程式に代入して新たな微分方程式を得るわけですが、これは微分方程式によりけりですから、一般化された結果を導くのも難しく、したがって今回めちゃくちゃ頑張って計算した結果はStokes systemにしか適用されないわけです……かなしい。しかし実際には楕円型正則性と呼ばれる理論により楕円型方程式の弱解も今回と同じような正則性が成り立つことが知られているようです。つまり領域がある程度滑らかであれば解の微分可能性もアップします。

 

ここでお話は終わりにしてもいいですが、せっかくですのでもうちょっと話を続けましょう。先ほどの解の正則性において、 \Omega \neq \mathbb{R}^n としました。では全空間の場合はどうかというと、大体同じ結果が得られます。しかし2次元の場合のみ仮定が少し異なります。なぜかということを少しお話しておきましょう。先ほどにも表れた関数空間

\begin{align} \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n = \left\{ f \in \{C_0^{\infty}(\Omega)\}^n \ | \ \mathrm{div}f=0 \right\} \end{align}

\begin{align} \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n = \overline{\{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n}^{\| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}}} \end{align}

が問題になります。この \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n というのは定義から \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n という空間の \| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}} というnormにおける閉包を表します。基本的に多くの関数空間はほかのBanach空間などのnormにおける閉包をとるので問題はないのですが、今回は \| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}} というnormを用いるので、この閉包のwell defined性を確認しておきたいです。どういうことかというと、定義に従えば {}^{\forall}u \in \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n に対して {}^{\exists}\{u_m\} \subset \{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n であって

\begin{align} \|\nabla u_m-\nabla u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^2}} \to 0 \ \ \ (m \to \infty) \end{align}

が成立するわけですが、普通にBanach空間でのnormと違い \nabla が邪魔をしているためこの条件から極限 u が一意的かどうか分かりません。つまり

\begin{align} \lim_{m \to \infty} \nabla u_m =\nabla u \end{align}

が成立しますがこのままでは u に定数を足しても同じ条件を満たしてしまい、一意性が担保されません。この問題を解決するために、一意性を示しましょう。ここでもし n \ge 3 ならば、Sobolevの埋蔵定理が使えます。つまり

\begin{align} \frac{1}{q}=\frac{1}{2}-\frac{1}{n} \end{align}

を満たす q すなわち

\begin{align} q=\frac{2n}{n-2} \end{align}

および {}^{\forall}u \in \{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n に対して正の定数 C=C(n) が存在して

\begin{align} \|u\|_{\{L^q(\Omega)\}^n} \le C_1\|\nabla u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^2}} \end{align}

が成立します。これを用いれば閉包の定義

\begin{align} \|\nabla u_m-\nabla u\|_{\{L^2(\Omega)\}^{n^2}} \to 0 \ \ \ (m \to \infty) \end{align}

からCauchy列を構成して埋蔵定理の不等式に代入することで L^q(\Omega) での極限を得ることができます。したがって一意性が得られるわけです。しかしながら q の表示からもわかるように、この議論は n=2 の場合には適用されません。では2次元の場合はどうすればいいのか?これにはSobolevの埋蔵定理を応用した次の関係を用います。

 

\Omega \subset \mathbb{R}^2 をdomainとし \overline{\Omega} \neq \mathbb{R}^2 とします。開球 B_0,B \subset \mathbb{R}^2\overline{B}_0 \cap \overline{\Omega}=\varnothing , \ B \cap \Omega \neq \varnothing を満たすようにとると、1 より大きい q および {}^{\forall}u \in C_0^{\infty}(\Omega) に対して正の定数 C = C(B_0,B,q) が存在して

\begin{align} \|u\|_{L^q(B \cap \Omega)}\le C\|\nabla u\|_{\{L^2(\Omega)\}^2} \end{align}

が成立します。

 

少し面白い定理です。証明には領域に含まれないような開球をとる必要があるため \overline{\Omega} \neq \mathbb{R}^2 でなければなりません。この証明には初等的な不等式の計算をしますが、なんともすごい計算でびっくりします。これを用いることで、2次元の場合も先と同じようにして極限の一意性を得ることができるわけです。

 

さて、何が言いたかったというと、関数空間 \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n がwell definedであるためには \overline{\Omega} \neq \mathbb{R}^2 が必要であるということです。なぜ解の正則性で \Omega \neq \mathbb{R}^n としたかというと、この空間が定義できない場合を除くためであったことが分かります。

 

ちなみにそもそもなぜこんな関数空間 \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n を定義したのかというと、弱解の空間として定義したかったからです。まだ弱解については話していませんでしたから、ここでStokes systemの弱解について述べておきます。

 

Stokes system

\begin{align}\left\{\begin{array}{l} -\Delta u+\nabla p=f \\ \mathrm{div}u=0 \\ u|_{\partial \Omega}=0 \end{array}\right.\end{align}

に対して

\begin{align} \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n = \left\{ f \in \{C_0^{\infty}(\Omega)\}^n \ | \ \mathrm{div}f=0 \right\} \end{align}

\begin{align} \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n = \overline{\{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n}^{\| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}}} \end{align}

とし、f

\begin{align} f=f_0+\mathrm{div}F , \ \ \ f_0 \in \{L_{\mathrm{loc}}^2(\Omega)\}^n , \ F \in \{L^2(\Omega)\}^{n^2} \end{align}

と表されるとします。ただし

\begin{align} (\mathrm{div}F)_j = \sum_{i=1}^n D_iF_{ij} \end{align}

とおきます。このとき {}^{\forall}v \in \{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n に対して

\begin{align} \int_{\Omega} (\nabla u)\cdot (\nabla v)dx=\int_{\Omega}f \cdot v dx \end{align}

を満たす u \in \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n をStokes systemの弱解といいます。

 

さて、この弱解の一意性を見てみましょう。u,\widehat{u} \in \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n とし {}^{\forall}v \in \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n に対して

\begin{align} \int_{\Omega}f \cdot vdx=\int_{\Omega} (\nabla u)\cdot (\nabla v)dx , \ \ \ \int_{\Omega}f \cdot vdx=\int_{\Omega} (\nabla \widehat{u})\cdot (\nabla v)dx \end{align}

とするとき,

\begin{align} \int_{\Omega} (\nabla u)\cdot (\nabla v)dx=\int_{\Omega} (\nabla \widehat{u})\cdot (\nabla v)dx \end{align}

より

\begin{align} \int_{\Omega}(\nabla (u-\widehat{u}))\cdot (\nabla v)dx=0 \end{align}

ですが、\{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n = \overline{\{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n}^{\| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}}} より

\begin{align} v_m \to u-\widehat{u} \ \ \ \mathrm{in} \ \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n \end{align}

となるような \{v_m\} \subset \{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n をとればSchwartzの不等式より

\begin{align} \begin{array}{ll} \|\nabla (u-\widehat{u})\|_{\{L^2\}^{n^2}}^2 &=& \int_{\Omega} (\nabla (u-\widehat{u})) \cdot (\nabla (u-\widehat{u}))dx \\ &=& \int_{\Omega} (\nabla (u-\widehat{u})) \cdot (\nabla (u-\widehat{u}))dx-\int_{\Omega}(\nabla (u-\widehat{u}))\cdot (\nabla v_m)dx \\ &=& \int_{\Omega} (\nabla (u-\widehat{u}))\cdot (\nabla (u-\widehat{u})-\nabla v_m)dx \\ &\le& \|\nabla (u-\widehat{u})\|_{\{L^2\}^{n^2}}\|\nabla (u-\widehat{u})-\nabla v_m\|_{\{L^2\}^{n^2}} \\ &\to& 0 \end{array}\end{align}

より u=\widehat{u} を得ます。したがって弱解は一意的です。

 

さて、この証明をみればわかると思いますが、弱解の一意性を見るのに

\begin{align} \{ C_{0,s}^{\infty}(\Omega) \}^n = \left\{ f \in \{C_0^{\infty}(\Omega)\}^n \ | \ \mathrm{div}f=0 \right\} \end{align}

\begin{align} \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n = \overline{\{C_{0,s}^{\infty}(\Omega)\}^n}^{\| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}}} \end{align}

という空間であれば十分であることが分かります。もちろん一意性を見るのにより狭い空間である H^1(\Omega) での閉包をとってもいいですが、この証明には L^2(\Omega) での収束は必要なく、したがって \| \nabla \cdot\|_{\{L^2\}^{n^2}} の閉包 \{\widehat{H}_{0,s}^1(\Omega)\}^n という空間で十分です。これがこの空間を導入する理由の1つであると思います。

 

さて、話が長くなってしまいましたのでこのくらいでおしまいにしようと思いますが、要するに今回の内容で一番重要だったことはStokes systemにおける解の正則性です。これがStokes作用素の性質を示すのに必要な情報であるので示しましたが、なかなか証明を追うのが大変であったことを述べておきます。単にStokes作用素の性質を見るだけならこの辺の知識は仮定してしまってもよかったのかもしれません(笑)

 

まあいい勉強になりましたし、ますます論文の解析におけるモチベーションが上がってきました!!次回はStokes作用素の性質をまとめ、いよいよ満を持してNavier Stokes方程式の論文を紐解いていきましょう。これが僕の修士生活初の論文ですからドキドキしています。果たしてひよこてんぷらは無事に修論を書き大学を卒業できるのか……!?!?ご期待ください!!