修論が無理すぎて厳しい話Part1

こんにちは。ひよこてんぷらです。修士論文です。無理です。

 

まあいきなりこんなこといってもあれなので、つらつらと苦しみをつづっていきます。

 

もうそろそろ修論を書こうということで指導教員からテーマを与えられました。そのテーマが放物型Keller Segel方程式の一番広い初期データにおける解の存在と解析性を示そうという話です。

 

放物型Keller Segel方程式とは次のような方程式です。

\begin{align}
\left\{\begin{array}{rll}
\partial_tu &=\Delta u-\nabla \cdot (u\nabla v) & x \in \mathbb{R}^n , \ t>0 \\
\partial_tv &=\Delta v -\gamma v+u & x \in \mathbb{R}^n , \ t>0 \\
u(0,x) &= u_0(x) & x \in \mathbb{R}^n \\
v(0,x) &= v_0(x) & x \in \mathbb{R}^n
\end{array}\right. \tag{KS}
\end{align}

ここで  u=u(t,x) , v=v(t,x) が未知関数で  \gamma \ge 0 は定数です。こいつをBesov空間上で考えていきます。とりあえず連立方程式が嫌なので、関数 u,v をそれぞれ
\begin{align}u : t \mapsto u(t,x) , \ \ \ v : t \mapsto v(t,x)\end{align}
とみなし、また
\begin{align}w = \left(\begin{array}{c}
u \\
v
\end{array}\right) , \ \ \ w_0 = \left(\begin{array}{c}
u_0 \\
v_0
\end{array}\right) , \ \ \ F_{\gamma}(w) = \left(\begin{array}{c}
-\nabla \cdot(u\nabla v) \\
-\gamma v+u
\end{array}\right)\end{align}
とおくことで、(KS)を
\begin{equation}
\partial_tw-\Delta w=F_{\gamma}(w) \ \ \ t>0 , \ \ \ w(0)=w_0 \tag{ABS}
\end{equation}

の形に帰着させます。こうしてみると非線形項アリの熱方程式って感じです。んでまあこれを初期データが  w_0 \in \dot{B}^{-2+n/p}_{p,q} \times \dot{B}^0_{\infty,q} の場合において考えましょうということです。どうも僕にはさっぱりですが、この空間が初期データでは最大の集合らしいです。なんでだろう。

 

で、まあ細かいことはおいておきまして、実は解析手法はもうだいたいわかっています。既にNavier Stokes方程式において同様の考察がなされている(Strong solutions of the Navier-Stokes equations based on the maximal Lorentz regularity theorem in Besov spaces)ので、それをKeller Segel方程式にも適用させたいといったところです。方法としては、まず非線形項を落とした熱方程式

\begin{equation}
\partial_tw-\Delta w=f \ \ \ t>0 , \ \ \ w(0)=w_0 \tag{HE}
\end{equation}

を調べることから始めます。後々の都合上非斉次項  f を加味して考えます。でまあこれの解析についてはもう先の論文でほとんど分かっています。でもとりあえずはこれをしっかり理解することから始めたいです。

 

でもこっからもう挫折しています。つらい。

 

まずこの手の問題は非斉次項&初期値アリは大変なので、

\begin{eqnarray}\partial_tw-\Delta w&=&0 \ \ \ t>0 , \ \ \ w(0)=w_0 \tag{HE1} \\ \partial_tw-\Delta w&=&f \ \ \ t>0 , \ \ \ w(0)=0 \tag{HE2}\end{eqnarray}

に分解して考え、後で重ね合わせの原理です。これはよい。

 

で、欲しい結果はmaximal Lorentz regularityなので、まず(HE1)の解がLorentz空間としていい感じになっていることを確かめる必要があります。そもそもいい感じってどんな感じかというと、作用素によって最大正則性のclassが決まりまして、かなりいいやつは原点がresolventで解のclassもSobolev classまで言えるわけですが、どうもLaplacianはそこまで言えないようです。たぶん解そのものはLorentzにならず、局所Lorentzくらいしか言えないと思われます(遠方がダメなんだと思う)。そういうわけで時間微分とLaplacian作用させたやつがLorentz classを言いたいのだと思います。たぶん。

 

もうこの時点でお手上げです。なにせBesov空間とかLorentz空間とかさっぱりなのでマジでわからん。あと補間理論がばんばか出てくるんですがこれもわからん。厳しい。

 

まずはこの結果を使うと思われます。

\begin{align} \|\Delta e^{t \Delta}a_i\|_{\dot{B}_{r,1}^{s}} \le Ct^{-\frac{1}{2}n\left(\frac{1}{p}-\frac{1}{r}\right)-\frac{1}{2}(s-k_i)-1}\|a_i\|_{\dot{B}_{p,\infty}^{k_i}} \end{align}

もうこの時点であれですが、まあこれは認めましょう。Navier Stokesでも出てきたのでしょうがないです。でまあこの形は要するに弱  L^p ってやつで、いわゆるLorentz classの一種です。でまあこいつは補間によって

\begin{align} ( L^{\alpha_0,\infty}(0,\infty),L^{\alpha_1,\infty}(0,\infty) )_{\theta,q}=L^{\alpha,q}(0,\infty) \end{align}

みたいな関係があるっぽいので、補間によってLorentz classを出そうって感じです。でBesov空間も

\begin{align} (\dot{B}_{p,\infty}^{k_0},\dot{B}_{p,\infty}^{k_1})_{\theta,q}=\dot{B}_{p,q}^{k} \end{align}

みたいな関係があるっぽいので、補間からいけそうです。でもまあ気になったこととして、補間で使える理論は有界線形作用素に対する補間でもってそいつも有界線形だぞっていう話ですが、ここで使いたいのは次の作用素

\begin{align} (Sa)(t) = \|\Delta e^{t \Delta}a\|_{\dot{B}_{r,1}^{s}} \end{align}

に対してです。有界なのはいいですがこいつは線形ではなくsub additiveです。この場合はどうなのか?Marcinkiewiczの補間はsub additiveですが結果は弱  L^p から  L^p を言うということで、この両方の定理のいいとこどりをした主張を使いたいです。どうも調べてもよく分かりませんが、成立はするそうです。そういうわけでこれを使います(でもこれも証明のソースは探しとかないとな…)。

 

でまあ結果は得られるものの、ここでまたよくわからん問題がでます。というのも普通は1次元Besov値関数なのでまあ後は得られたBesov値に初期データとして使いたい変数をぶちこめばいいですが、今回は2次元の直積空間なので、ここらへんもなんかうまくやらないといけないっぽいです。うーんわからん。まず普通にそれぞれの初期データに関して理想となる集合  \dot{B}_{p,q}^{-2+n/p} , \dot{B}_{\infty,q}^0 になるように変数を代入します。ただこれをする時点でかなり変数に制限がかかって、最終的に

\begin{align} \alpha=\left(\frac{1}{2}s+1\right)^{-1} \end{align}

に対して

\begin{eqnarray*} \left\| \|Ae^{-tA}u_0\|_{\dot{B}_{n/2,1}^s} \right\|_{L^{\alpha,q}(0,\infty)} &\le& C\|u_0\|_{\dot{B}_{p,q}^{-2+n/p}} \\ \left\| \|Ae^{-tA}v_0\|_{\dot{B}_{\infty,1}^s} \right\|_{L^{\alpha,q}(0,\infty)}&\le& C\|v_0\|_{\dot{B}_{\infty,q}^0} \end{eqnarray*}

となりました。あってるんだろうか?どうしたのかというと、まず  \alpha はいろいろあって

\begin{align} \frac{1}{\alpha} =\frac{1}{2}n\left(\frac{1}{p}-\frac{1}{r}\right)+\frac{1}{2}(s-k)+1 \end{align}

なる関係を満たすわけですが、初期データとしてまず  k=0,p=\infty を入れると自動的に  r=\infty となり、これでもう

\begin{align} \alpha=\left(\frac{1}{2}s+1\right)^{-1} \end{align}

が決まってしまいます。そうすると最終的に解の直積もおなじLorentz classになってほしいわけですからこうなるようにもう一方もセッティングしないとダメっぽいです。そうすると  k=-2+n/p のみならず  r=n/2 も強制的に決まってしまいます。そうして上式が成立し、その直積として

\begin{align} \|\Delta e^{t\Delta}w_0\|_{L^{\alpha,q}((0,\infty):\dot{B}_{n/2,1}^s \times \dot{B}_{\infty,1}^s)} \le C\|w_0\|_{\dot{B}_{p,q}^{-2+n/p} \times \dot{B}_{\infty,q}^0} \end{align}

が得られるというわけです。

 

という風に考えましたが合ってるんだろうか?なんかもうこの時点でダメダメなので挫折しそう。きつい。あと変数の束縛条件もいまいち考察していないので、ここもあとでちゃんとやらないと……

 

んでまあこれはまだ序の口で、次は(HE2)の解析をせにゃあかんのですが、これもわからん。

\begin{align} \partial_tw-\Delta w=f \ \ \ t>0 , \ \ \ w(0)=0 \tag{HE2} \end{align}

こいつはあれです。最大正則性をもろに使います。どうも論文ではこの結果を儀我先生の論文から引用しているみたいですが、これもマジでわからん。記号の意味がちんぷんかんぷんで、あとBanach空間は  \zeta convexとかもう意味わかんないよ!!でも調べてみるとこれはUMDに同値らしい。ふーむ。まあそんなわけでここは深追いせず結果を認めることにするか……

 

でまあ結果を認めると、とりあえず最大正則性として fL^p classなら一意解が存在してくれるわけですが、この解のclassがいまいちわからん。先にも述べたようにどうも解 w 自身は L^p classにならず、 \partial_tw,\Delta wL^p classになるらしいです。これはおそらくLaplacianが原点をresolventにもたないせいだと思われます。一番いい最大正則性のclass  \mathcal{MR}_p((0,\infty):X) では普通に解自身が L^p classで、時間微分も含めてSobolev classにまでなるのだがここではそうはいかないと。でまあ何が困るかというと、いい感じに解作用素を定義できない!

 

論文ではこの結果から次の作用素

\begin{align} f \mapsto (\partial_tw,\Delta w) \end{align}

有界線形であると言っています。確かにこれは儀我先生の結果の不等式が意味するものですが、どうもこれを使った議論にもいまいち納得いかない。

 

まずはこの結果を補間することから始めます。 L^p classといってもこれはBanach空間値関数に対してなので、それに何を選ぶかが問題になります。論文ではここで斉次Sobolev空間値とし、補間によってBesov空間値にもっていってます。わざわざこのステップを踏むのはBesovはUMDじゃないからかな?とすると斉次SobolevはUMDなのかな?うーむわからん!でまあさらに補間はもう一回使って、 L^p classからLorentz classにまで昇華させると。ただこれもいまいち納得いかず、というのも次の作用素

\begin{align} f \mapsto (\partial_tw,\Delta w) \end{align}

がwell definedなのは f \in L^p に対して一意解が存在するからこの作用素が定義できるのであって、この補間も無条件にwell definedな作用素なのかな?確かに有界線形作用素における補間理論から作用素が作られるのはいいけども、それはBesov値のLorentz classの非斉次項 f に対する一意解の存在を保証しているんだろうか??謎が深まる……

 

そして次に謎なのが最大正則性のクラスがBanach空間かどうかです。具体的には次の関数空間

\begin{align} \mathcal{M} =\{ w: \mathrm{measurable \ in} \ (0,T) \ | \ \partial_tw,\Delta w \in L^{p,q}((0,T):X) , \ w(0)=0 \} \end{align}

\begin{align} \|\cdot\|_{\mathcal{M}} =\| \partial_t \cdot\|_{L^{p,q}((0,T):X)}+\| \Delta \cdot\|_{L^{p,q}((0,T):X)} \end{align}

に関して完備なのか?という問いです。困ったことにCauchy列をとっても直接極限関数を捕まえられないので、まずはそこから解決したいわけです。おそらく次の関係

\begin{align} w_n(t)-w_m(t) = \int_0^t \partial_tw_n(s)-\partial_tw_m(s)ds \end{align}

がヒントかと思われます。これで左辺の何らかのnormを右辺のLorentz normで抑えられれば極限関数を捕まえられるので、あとはそいつがいい感じの関数であることを示せればよいと。ではどんなnormで収束させるか?まず最大正則性のclassから分かるようにLorentz classでは収束しないはず。では何か?有界性? L^{\infty} なら収束するだろうか?しかし時間が遠方も含むとなんだか怖いな……ということで広義一様収束性くらいなら極限関数を捕まえられるだろうか?ということでトライ。しかしうまくいかない。広義一様収束となればnormを中に入れることで L^1 normが出てくるので、こいつにHölderで L^p は行けそう。そんで再配列のnorm不変からいい感じにはなる。ただしLorentzの定義では t^{\frac{p}{q}-1} 的な項をかけて積分しなければならないので、これは困りました。値によってはsingularになってしまうので、うまくいかないっぽい……

 

そういうわけで、こいつがBanach空間であることさえわからん!!もうどうしたらいいんだ!!詰んでおります。

 

まあここいらの話をあきらめていきなり非線形項の評価から始めてしまうという手もあります。その場合は非線形項がBesov値のLorentz classであることを言えればオッケー。でもこれも難しそう……何から何までお手上げ状態です。つらいよーー