こんにちは。ひよこてんぷらです。
さて、前回はFourier multiplierについての話をざっくりとやって、で、満を持してBesov空間のあれこれをやろうとしていた……のですが、まだ少し準備が必要という段階でした。
まずはLaplacianのFourier multiplier をうまく定義するということを考えます。しかしこのためには、いろいろとやらねばならないことがあります。かなり基礎的な話も出てくるので、証明は軽く飛ばしながら基本事実を見ていきましょう。
まずは次の関数空間 を定義しましょう。
\begin{equation} \mathscr{S}_0=\mathscr{S}_0(\mathbb{R}^n)=\left\{ f \in \mathscr{S} \, \left| \, \int_{\mathbb{R}^n} x^{\alpha}f(x)dx=0 \quad {}^{\forall}\alpha \in \mathbb{N}_0^n \right.\right\} \end{equation}
このとき、次が成立します。
(i) は の閉部分空間である。
(ii) 次の関係
\begin{equation} \mathcal{F}\mathscr{S}_0= \left\{ f \in \mathscr{S} \, \left| \, \partial_{\xi}^{\alpha}f(0)=0 \quad {}^{\forall}\alpha \in \mathbb{N}_0^n \right.\right\} \end{equation}
が成立する。
(iii) が位相同型の意味で成立する。
さて、ここで は多項式の空間とします。この話は全て澤野「ベゾフ空間論」に載っています。証明はおいといて、いくつか補足をします。
いままでの話では、急減少関数の空間 についてあまり触れていませんでしたが、この空間はseminorm
\begin{equation} \|f\|_{\mathscr{S}}^{(k)}=\max_{|\alpha| \le k}\sup_{x \in \mathbb{R}^n} \left|(1+|x|)^k\partial_x^{\alpha}f(x)\right| \end{equation}
によってFréchet空間になることが知られています。このときの収束は
\begin{equation} f_j \to f \quad \text{in } \mathscr{S} \quad \Longleftrightarrow \quad \|f_j-f\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \to 0 \quad {}^{\forall}k \in \mathbb{N}\end{equation}
という意味です。 にも同様のseminormを与えます。つまり(i)の閉部分空間とはこの収束の意味で考えています。そして(iii)については、通常斉次Besov空間 は多項式の違いをすべて無視しています。これは、普通の超関数 で考えてしまうと、normの分離公理
\begin{equation} \|f\|_{\dot{B}_{p,q}^s}=0 \quad \Longleftrightarrow \quad f=0 \quad \text{in } \mathscr{S}^* \end{equation}
を満たさなくなってしまうからです。したがって多項式の違いを無視することで、この問題を回避しています。つまり斉次Besovにおける超関数は の意味で考えているということです。したがって、(iii)によって斉次Besovでは の双対として超関数を考えれば十分であるということを意味しています。
さて、そろそろ核心に迫ってきています。次に1つ初等的だけど重要な命題を用意しておきます。
命題D:
とするとき、 に対して
\begin{equation} \left| \partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s \right| \le C_{\beta}R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|}|\xi|^{s-|\beta|} \end{equation}
が成立します。
さて、 のときはよいので、証明は数学的帰納法でやりましょう。
\begin{equation}\begin{split} \partial_{\xi_j}\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s &=\partial_{\xi}^{\beta}(s|\xi|^{s-2}\xi_j) \\ &=s\sum_{\gamma \le \beta}\binom{\beta}{\gamma} (\partial_{\xi}^{\gamma}|\xi|^{s-2})\partial_{\xi}^{\beta-\gamma}\xi_j \\ &=s(\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^{s-2})\xi_j+s\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma} (\partial_{\xi}^{\gamma}|\xi|^{s-2})\partial_{\xi}^{\beta-\gamma}\xi_j \end{split}\end{equation}
最後のLeibnizで だけ取り出しました。これにより、総和の中は です。帰納法の仮定を用いると
\begin{equation}\begin{split} \left|\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^{s-2} \right| &\le C_{\beta}R^{|\beta|^2}(|s-2|+1)^{|\beta|}|\xi|^{s-2-|\beta|} \\ &\le 3^{|\beta|}C_{\beta}R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|}|\xi|^{s-2-|\beta|} \end{split}\end{equation}
とできるので、
\begin{equation}\begin{split} \left|\partial_{\xi_j}\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s\right| &\le |s|\left|\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^{s-2} \right| |\xi_j|+|s|\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma} \left|\partial_{\xi}^{\gamma}|\xi|^{s-2} \right| \left|\partial_{\xi}^{\beta-\gamma} \xi_j \right| \\ &\le |s|3^{|\beta|}C_{\beta}(|s|+1)^{|\beta|}|\xi|^{s-2-|\beta|}|\xi| \\ &+|s|\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma}3^{|\gamma|}C_{\gamma}R^{|\gamma|^2}(|s|+1)^{|\gamma|}|\xi|^{s-2-|\gamma|} \\ &\le 3^{|\beta|}C_{\beta}R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|+1}|\xi|^{s-(|\beta|+1)} \\ &+R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|+1}\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma}3^{|\gamma|}C_{\gamma}|\xi|^{s-2-|\gamma|} \end{split}\end{equation}
となります。最後に、総和の中を検討しましょう。
\begin{equation} |\xi|^{s-2-|\gamma|}=|\xi|^{s-(|\beta|+1)}|\xi|^{|\beta|-|\gamma|-1} \end{equation}
と変形すると、 より なので、特に
\begin{equation} 0 \le |\beta|-|\gamma|-1 \le |\beta| \end{equation}
となります。ここで ならばべきは小さいほうが値は大きく で、 のときは逆に となり、結局常に
\begin{equation} |\xi|^{s-2-|\gamma|}=|\xi|^{s-(|\beta|+1)}|\xi|^{|\beta|-|\gamma|-1} \le R^{|\beta|} |\xi|^{s-(|\beta|+1)} \end{equation}
としてよいです。ゆえに
\begin{equation}\begin{split} \left|\partial_{\xi_j}\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s\right| &\le 3^{|\beta|}C_{\beta}R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|+1}|\xi|^{s-(|\beta|+1)} \\ &+R^{|\beta|^2}(|s|+1)^{|\beta|+1}|\xi|^{s-(|\beta|+1)}\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma}3^{|\gamma|}C_{\gamma} \\ &\le R^{(|\beta|+1)^2}(|s|+1)^{|\beta|+1}|\xi|^{s-(|\beta|+1)} \left\{ 3^{|\beta|}C_{\beta}+\sum_{\gamma \lt \beta}\binom{\beta}{\gamma}3^{|\gamma|}C_{\gamma} \right\} \end{split}\end{equation}
となり証明完了です。
証明は単に帰納法を使っただけですが、この評価が今後の議論のポイントです。なお、ここでは のとき
\begin{equation} \left| \partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s \right| \le C_{\beta,s}|\xi|^{s-|\beta|} \end{equation}
くらいが言えていれば十分です。
では、ここでもう一つ証明しておきましょう。任意の および に対して とおくと
\begin{equation} \lim_{\xi \to 0}\partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)=0 \quad {}^{\forall}\alpha \in \mathbb{N}_0^n \end{equation}
が成立します。したがって です。さて、これもしっかり証明するとややめんどうですが、まずはLeibnizの公式から
\begin{equation} \partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)=\partial_{\xi}^{\alpha}(|\xi|^sf(\xi))=\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta}(\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s)\partial_{\xi}^{\alpha-\beta}f(\xi) \end{equation}
を導きます。ここで命題Dから のとき
\begin{equation} \left| \partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s \right| \le C_{\beta,s}|\xi|^{s-|\beta|} \end{equation}
であり、
\begin{equation}\begin{split} |\partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)| &\le \sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta}\left|\partial_{\xi}^{\beta}|\xi|^s \right|\left|\partial_{\xi}^{\alpha-\beta}f(\xi) \right| \\ &\le \sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} C_{\beta,s}|\xi|^{s-|\beta|} \left|\partial_{\xi}^{\alpha-\beta}f(\xi) \right| \end{split}\end{equation}
となります。さて、 なので、 のべきが非負なら普通に極限 で結論を得るわけですが、 のべきが負の場合はすぐに証明終わりとはいきません。示すべきことは、 ならどんな多項式程度の特異性も解消できるか?ということです。これについては、Taylorの定理から証明できます。Taylorの定理から原点周りの展開
\begin{equation} f(\xi)=\sum_{|\alpha| \le N-1}\frac{\partial_{\xi}^{\alpha}f(0)}{\alpha!}\xi^{\alpha}+\sum_{|\alpha|=N}\frac{N}{\alpha !}\xi^{\alpha}\int_0^1(1-t)^{N-1}(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi) dt \end{equation}
が成立するわけですが、 のとき任意の に対して だったので、Taylor級数の部分は消えてしまい
\begin{equation} f(\xi)=\sum_{|\alpha|=N}\frac{N}{\alpha !}\xi^{\alpha}\int_0^1(1-t)^{N-1}(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi) dt \end{equation}
となります。したがって
\begin{equation}\begin{split} |f(\xi)| &\le \sum_{|\alpha|=N}\frac{N}{\alpha !}|\xi^{\alpha}|\left|\int_0^1(1-t)^{N-1}(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi) dt\right| \\ &\le \sum_{|\alpha|=N}\frac{N}{\alpha !}|\xi|^{|\alpha|}\int_0^1(1-t)^{N-1}|(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi)| dt \\ &= |\xi|^N\sum_{|\alpha|=N}\frac{N}{\alpha !}\int_0^1(1-t)^{N-1}|(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi)| dt \end{split}\end{equation}
を得るわけですが、 より
\begin{equation} \lim_{\xi \to 0}\int_0^1(1-t)^{N-1}|(\partial_{\xi}^{\alpha}f)(t\xi)| dt=0 \end{equation}
なので、結局
\begin{equation} \lim_{\xi \to 0}|\xi|^{-N}|f(\xi)|=0 \end{equation}
が分かります。 は微分階数ですが、これはなんでもよかったので、したがってどんな多項式の特異性も解消できます。ゆえに
\begin{equation}\lim_{\xi \to 0} |\partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)| \le \lim_{\xi \to 0}\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} C_{\beta,s}|\xi|^{s-|\beta|} \left|\partial_{\xi}^{\alpha-\beta}f(\xi) \right|=0 \end{equation}
で証明完了です。 だったので原点周りの特異性が気になりましたが、これは大丈夫であるということが分かりました。遠方では は高々多項式程度の増大度なので、 が言えます。基本的な命題の気もしますが、けっこう証明はめんどうですね……
さて、これで次を示すことができます。任意の および に対して
\begin{equation} \sum_{j=-\infty}^{\infty} \left\{ ((-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f \right\} \end{equation}
は の位相で収束します。
さて、ここで は前回に登場したLittlewood-Paley分解です。一応もう一度書いておくと、
\begin{gather} \varphi \in C_0^{\infty} \quad \text{with} \quad \text{supp } \varphi \subset \left\{ \xi \in \mathbb{R}^n \, | \, 1/2 \le |\xi| \le 2 \right\} \\ \text{and} \quad \sum_{j=-\infty}^{\infty} \varphi (2^{-j}\xi)=1 \quad {}^{\forall} \xi \in \mathbb{R}^n \setminus \{0\} \end{gather}
に対して と定義しています。
さて、まずは簡単に計算していきます。 なので、次の関係
\begin{equation} \mathcal{F}^{-1}[f]*\mathcal{F}^{-1}[g]=\mathcal{F}^{-1}[fg] \end{equation}
にも注意しながら、
\begin{equation}\begin{split} ((-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f&=\mathcal{F}^{-1}[|\xi|^s\mathcal{F}[\varphi_j]]*\mathcal{F}^{-1}[\mathcal{F}[f]] \\ &=\mathcal{F}^{-1}[|\xi|^s\mathcal{F}[\varphi_j]\mathcal{F}[f]] \\ &=\mathcal{F}^{-1}[|\xi|^s\varphi (2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f]] \end{split}\end{equation}
を得ます。さて、ここで
\begin{equation} \text{supp } \varphi \subset \left\{ \xi \in \mathbb{R}^n \, | \, 1/2 \le |\xi| \le 2 \right\} \end{equation}
なので、 は原点付近ではべったりと になっています。ゆえに何回微分しても原点周りでは なので、 とあわせて です。また、仮定から なので、すぐわかるように です。実際、急減少関数の積はまた急減少なのはすぐ分かります。あとは原点での微分係数ですが、Leibnizで積の微分を考えればOKです。そして先ほど示したことからこれに をかけても なので、結局
\begin{equation} ((-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f =\mathcal{F}^{-1}[|\xi|^s\varphi (2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f]] \in \mathscr{S}_0 \end{equation}
がすべての に対して言えます。ゆえに後は での収束を言えば、閉部分空間より での収束が分かります。ということでCauchy列であることを示していきます。
ではいきましょう。先ほど示したことから とおけば に注意します。まずはseminormの定義を計算していきます。
\begin{equation}\begin{split} &\|\varphi (2^{-j}\xi)g\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \\ &=\max_{|\alpha| \le k}\sup_{\xi \in \mathbb{R}^n} \left| (1+|\xi|)^k\partial_{\xi}^{\alpha}(\varphi (2^{-j}\xi)g(\xi) ) \right| \\ &=\max_{|\alpha| \le k}\sup_{\xi \in \mathbb{R}^n} \left| (1+|\xi|)^k\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} \partial_{\xi}^{\beta}(\varphi (2^{-j}\xi) )\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi) \right| \\ &=\max_{|\alpha| \le k}\sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}} \left| (1+|\xi|)^k\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} 2^{-j |\beta|} (\partial_{\xi}^{\beta}\varphi) (2^{-j}\xi)\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi) \right| \end{split}\end{equation}
最後の等式において、
\begin{equation} \text{supp } \varphi \subset \left\{ \xi \in \mathbb{R}^n \, | \, 1/2 \le |\xi| \le 2 \right\} \end{equation}
よりsupの範囲が絞れることを用いています。まずは が十分大きいときを考えましょう。このときは に対して
\begin{equation}\begin{split} &\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} 2^{-j |\beta|} \left|(\partial_{\xi}^{\beta}\varphi)(2^{-j}\xi)\right| \left|\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \\ &\le C_k(1+|\xi|)^{-k- 1}\sum_{\beta \le \alpha} \left|(\partial_{\xi}^{\beta}\varphi)(2^{-j}\xi)\right| \left|(1+|\xi|)^{k+1}\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \\ &\le C_k(1+|\xi|)^{-k- 1}\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\|g\|_{\mathscr{S}}^{(k+1)} \end{split}\end{equation}
とでもしてしまえば、十分大きな に対して
\begin{equation}\begin{split} &\sum_{j=N_1}^{N_2}\|\varphi (2^{-j}\xi)g\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \\ &\le \sum_{j=N_1}^{N_2}\sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}\left\{ (1+|\xi|)^k \times C_k(1+|\xi|)^{-k- 1}\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\|g\|_{\mathscr{S}}^{(k+1)} \right\} \\ &=C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\|g\|_{\mathscr{S}}^{(k+1)}\sum_{j=N_1}^{N_2}\sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}(1+|\xi|)^{-1} \\ &\le C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\|g\|_{\mathscr{S}}^{(k+1)}\sum_{j=N_1}^{N_2}2^{-j+1} \\ &\to 0 \quad (N_1,N_2 \to \infty) \end{split}\end{equation}
が分かります。では が小さいときはどうでしょうか。このときはまず に対して
\begin{equation}\begin{split} &\sum_{\beta \le \alpha}\binom{\alpha}{\beta} 2^{-j |\beta|} \left|(\partial_{\xi}^{\beta}\varphi)(2^{-j}\xi)\right| \left|\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \\ &\le C_k2^{-jk}|\xi|^k\sum_{\beta \le \alpha} \left|(\partial_{\xi}^{\beta}\varphi)(2^{-j}\xi)\right| \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \\ &\le C_k|2^{-j}\xi|^k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{\beta \le \alpha} \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \end{split}\end{equation}
とします。そうすると十分大きな に対して
\begin{equation}\begin{split} &\sum_{j=-N_1}^{-N_2}\|\varphi (2^{-j}\xi)g\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \\ &\le \sum_{j=-N_1}^{-N_2}\max_{|\alpha| \le k}\sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}\left\{ 2^k \times C_k|2^{-j}\xi|^k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{\beta \le \alpha} \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \right\} \\ &\le C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{j=-N_1}^{-N_2} \sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}\left\{ |2^{-j}\xi|^k \max_{|\alpha| \le k}\sum_{\beta \le \alpha} \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha -\beta}g(\xi)\right| \right\} \\ &\le C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{j=-N_1}^{-N_2} \sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}\left\{ 2^k \max_{|\alpha| \le k} \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)\right| \right\} \end{split}\end{equation}
とできます。さて、ここで再び先に示したことを用います。いま だったので、 です。すなわち原点で になるということが使えます。そして十分滑らかなので、特にLipschitz連続性から
\begin{equation} \max_{|\alpha| \le k} \left||\xi|^{-k}\partial_{\xi}^{\alpha}g(\xi)\right| \le C_k|\xi| \end{equation}
としてよいです。ゆえに
\begin{equation}\begin{split} \sum_{j=-N_1}^{-N_2}\|\varphi (2^{-j}\xi)g\|_{\mathscr{S}}^{(k)} &\le C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{j=-N_1}^{-N_2} \sup_{2^{j-1} \le |\xi| \le 2^{j+1}}|\xi| \\ &\le C_k\|\varphi\|_{\mathscr{S}}^{(k)}\sum_{j=-N_1}^{-N_2} 2^{j+1} \\ &\to 0 \quad (N_1,N_2 \to \infty) \end{split}\end{equation}
となります。さて、 だったので、
\begin{equation}\begin{split} \left\| \sum |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] \right\|_{\mathscr{S}}^{(k)} &= \left\| \sum \varphi(2^{-j}\xi)g \right\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \\ &\le \sum \left\| \varphi(2^{-j}\xi)g \right\|_{\mathscr{S}}^{(k)} \end{split}\end{equation}
に注意すれば、
\begin{equation} \sum |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] \end{equation}
は和が大きいときも小さいときもCauchy列となることが分かりました。ゆえに完備性から
\begin{equation} \sum_{j=-\infty}^{\infty} |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] \end{equation}
は の位相で収束します。さて、ここでFourier変換 は から への連続写像であることに注意すれば、逆変換して
\begin{equation}\begin{split} \mathcal{F}^{-1} \left[\sum_{j=-\infty}^{\infty} |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] \right] &= \sum_{j=-\infty}^{\infty} \mathcal{F}^{-1} [ |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] ] \\ &=\sum_{j=-\infty}^{\infty} \left\{ ( (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f \right\} \end{split}\end{equation}
も の位相で収束します。これでようやく での収束が言えました!!
さて、これより直ちに次の計算ができます。超関数の畳み込みの定義から任意の および に対して
\begin{equation}\begin{split} &\left< \sum_{j=-N_1}^{N_2} \left\{ ( (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f \right\},g \right> \\ &= \sum_{j=-N_1}^{N_2} \left< ( (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f ,g \right> \\ &=\sum_{j=-N_1}^{N_2} \left< f ,(m_{-1}(-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j) *g \right> \\ &= \left< f , \sum_{j=-N_1}^{N_2}\left\{(m_{-1}(-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j) *g\right\} \right> \\ &\to \left< f , \sum_{j=-\infty}^{\infty}\left\{(m_{-1}(-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j) *g\right\} \right> \quad (N_1,N_2 \to \infty) \end{split}\end{equation}
です。最後の極限は での収束が言えたことにより成立します。したがってこの双対性より に対してはこの位相で
\begin{equation} \sum_{j=-\infty}^{\infty} \left\{ ( (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f \right\} \end{equation}
が定義できます。ここで であったことに注意すれば、結局LaplacianのFourier multiplier は超関数に対しては
\begin{equation} (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}f = \sum_{j=-\infty}^{\infty} \left\{ ( (-\Delta)^{\frac{1}{2}s}\varphi_j)*f \right\} \quad \text{in } \mathscr{S}^* \quad {}^{\forall} f \in \mathscr{S}^* / \mathscr{P} \end{equation}
と定義すればよいことになります。
さて、ここでいくつかコメントをしておきます。まずこの定義から分かることは、残念ながらLaplacianのFourier multiplierはすべての超関数 に整合性のある定義を与えることはできず、多項式の違いを無視した空間 くらいでないと定義できないということです。そもそも斉次Besov空間 ではこの枠組み の中で定義を与えるため大きな問題は生じないわけですが、そうでない場合においてはちょっと困ります。
その原因は証明を見れば分かるとは思いますが、双対性から での位相の収束において総和の添字が小さいところを見るとき、 multiplierである が悪さをしていることが原因です。なぜ添字が小さいところで悪さをしていたのかを思い出すと、
\begin{equation} \sum_{j=-\infty}^{\infty} |\xi|^s \varphi(2^{-j}\xi)\mathcal{F}[f] \end{equation}
の における収束を見たいわけでした。特に、たくさん微分しても有界であることを確認したいわけでした。普通のLaplacianとして見れる場合、すなわち となっている場合は
\begin{equation} (-\Delta)^N=\mathcal{F}^{-1}|\cdot|^{2N}\mathcal{F} , \quad |\xi|^{2N}=(\xi_1^2+\cdots +\xi_n^2)^N \end{equation}
となっているため、原点付近は何も起こらず、しかも微分しても何も悪さをしません。ゆえに何も気にせず定義できます。しかし一般の の場合は、まず だと既に原点付近で特異性を持ち、そうでなかったとしてもたくさん微分すると特異性が生じます。例えば1次元では
\begin{equation} (\sqrt{\xi})'=\frac{1}{2\sqrt{\xi}} \end{equation}
のような具合です。しかしながら、Littlewood-Paley分解 はcompact supportを持ち、原点付近ではべったりと です。ゆえに各 においてはこのような特異性は気にする必要はないわけでした。とはいえ で のsupportが を含むように近づいてしまうので、やはり原点での特異性は避けては通れないということになります。ということでたくさん微分しても有界であることをみるのには、 が何かしらいい性質を持っていないとダメということです。そのいい性質というのが だったわけです。通常の よりさらによい空間を持ってきて、この問題を解消しました。で、その双対 が と位相同型なわけです。
しかしながら、結局は が原点で悪さをすることがダメなのなら、そもそも において のsupportが を含まないとすればよいのでは?と思います。実際に、その仮定のもとでLaplacianを定義していることも多いです。しかし、この条件下においては
\begin{equation} f \in \dot{B}_{p,q}^s \quad \Longleftrightarrow \quad f \in B_{p,q}^s \end{equation}
が全ての で成立することが知られています。 は非斉次のBesov空間です。つまりこの仮定をいれてしまうとそもそも空間として完全に非斉次Besovで特徴付けられてしまいます。ですから斉次空間における最大の特徴づけがこのLaplacianの性質である、とも言えるかもしれません。
さて、ということで今回の記事はLaplacianのFourier multiplierの話だけで終わってしまいました……しかしこれが斉次Besovにおける重要な性質に関わっていることも分かったので、よしとしましょう。では次回はいろいろと不等式などを証明していきたいと思います。