Leray-Schauderの不動点定理について
こんにちは。ひよこてんぷらです。今回はまた不動点定理をやります。
前回はSchauderの不動点定理をやりました。
これは、norm空間 とその空でない凸部分集合 およびcompactな部分集合 を考えるとき、任意の に対して なる が存在する、という不動点定理のことでした。
この不動点定理からさらにLeray-Schauderの不動点定理を示すことができます。今回はこれをやります。
さて、まずはcompactな写像の定義を与えます。
集合 に対する写像 がcompactであるとは、任意の有界集合 に対して がcompactとなることと定義します。ここでcompactとは、 でcompactということです。もちろん、 となります。
この定義を用いて、Leray-Schauderの不動点定理の主張を述べます。
をBanach空間とします。ここで、写像 はcompactであり、かつ任意の に対して とします。さらに、次を満たすとします。
ある が存在して、 を満たすような任意の に対して が成立する
このとき、 は不動点を持ちます。すなわち、 なる が存在します。
これがLeray-Schauderの不動点定理です。写像に関する仮定は強いですが、凸集合でなくても主張が成立します。これを示すために、次のステップに分けて考えましょう。
(i) 有界な凸閉集合 に対して がcompactであれば、 は不動点を持つ
(ii) に対して、 かつ はcompactかつ ならば、 は不動点を持つ
(iii) Leray-Schauderの不動点定理が成立する
では早速(i)から見ていきます。(i)に関してはSchauderの不動点定理から容易に示されます。実際、 は有界な凸閉集合ですから、写像のcompact性から がcompactになることより、写像 を とみることで、Schauderの不動点定理が使えます。したがって不動点の存在が示されます。
次に(ii)を示しましょう。さて、 に対して を
\begin{equation} f^*(x) =\left\{\begin{array}{cc} f(x) & \text{if} \quad \|f(x)\|_X \le 1 \\ f(x)/\|f(x)\|_X & \text{if} \quad \|f(x)\|_X \gt 1 \end{array}\right. \end{equation}
と定義すると、 となります。実際、 に対して ならば
\begin{equation} \|f^*(x)\|_X =\|f(x)\|_X \le 1 \end{equation}
また ならば
\begin{equation} \|f^*(x)\|_X =\left\|\frac{f(x)}{\|f(x)\|_X}\right\|_X = \frac{\|f(x)\|_X}{\|f(x)\|_X}=1 \end{equation}
より常に であり、したがってこれは を意味します。
次に連続性について、これは およびnormの連続性から分かります。念のため 周りでの連続性をチェックしておきましょう。 なる に対して
\begin{equation} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X=\|f^*(x)-f(x_0)\|_X \end{equation}
が成立するわけですが、もし ならば
\begin{equation} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X=\|f(x)-f(x_0)\|_X \end{equation}
より から連続であることが分かります。一方 ならば
\begin{equation}\begin{split} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X &=\left\| \frac{f(x)}{\|f(x)\|_X}-f(x_0) \right\|_X \\ &=\left\| \frac{f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)}{\|f(x)\|_X} \right\|_X \\ &=\frac{\|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X}{\|f(x)\|_X} \\ &\lt \|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \end{split}\end{equation}
となります。さて、いま であるから、
\begin{equation}\begin{split} &\|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \\ &=\|f(x)-f(x_0)+f(x_0)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \\ &\le \|f(x)-f(x_0)\|_X+\left\| f(x_0)\left\{ 1-\|f(x)\|_X \right\}\right\| \\ &=\|f(x)-f(x_0)\|_X+\|f(x_0)\|_X\left| 1-\|f(x)\|_X \right| \\ &= \|f(x)-f(x_0)\|_X+\left| \|f(x_0)\|_X-\|f(x)\|_X \right| \\ &\le \|f(x)-f(x_0)\|_X+\|f(x_0)-f(x)\|_X \end{split}\end{equation}
よりこの場合でも連続であることが分かります。したがって 周りでも連続で、 を得ます。また、仮定から はcompactなので、 もcompactです。
ここで、(i)を使います。すなわち、有界な凸閉集合 に対して であるから、不動点の存在がいえます。したがって なる が存在します。
最後に、これが不動点であることを示します。まず、 であるとします。このとき となります。いま、 であるとすると、 の定義から、 を得ますがこれは矛盾です。すなわち で、再び の定義から で不動点であることが分かります。一方で、 であるとすると、仮定から ですから すなわち で、やはり先と同じ結論を得ます。ゆえに(ii)が示されました。
最後に、Leray-Schauderの不動点定理を示しましょう。まずは初めの仮定である
ある が存在して、 を満たすような任意の に対して が成立する
という条件を に正規化します。このためには、 に対して を
\begin{equation} g(x,\lambda)=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}
と定義すればよいです。実際、 が を満たすとき、 の定義から
\begin{equation} x=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}
すなわち を得ます。このとき上の仮定から すなわち を得ます。また、仮定より写像 はcompactですが、 も同様の性質を持ちます。また、 より
\begin{equation} g(x,0)=\frac{1}{M}f(Mx,0)=0 \end{equation}
に注意します。
さて、まずは の不動点を求めましょう。任意の正の整数 および に対して
\begin{equation} g_k^*(x)=\left\{\begin{array}{cl} g\left(\frac{x}{\|x\|_X},k(1-\|x\|_X)\right) & \text{if} \quad 1-\frac{1}{k} \le \|x\|_X \le 1 \\ g\left( \frac{kx}{k - 1},1 \right) & \text{if} \quad \|x\|_X \lt 1-\frac{1}{k} \end{array}\right. \end{equation}
と定義します。このとき、 が成立します。 なのでnormの連続性と合わせれば連続性はいえそうです。念のため 周りでの連続性を確かめましょう。 なる に対して
\begin{equation}\begin{split} \|g_k^*(x)-g_k^*(x_0)\|_X &=\left\| g_k^*(x)-g\left(\frac{x_0}{\|x_0\|_X},k(1-\|x_0\|_X)\right) \right\|_X \\ &=\left\| g_k^*(x)-g\left(\frac{kx_0}{k - 1},1\right) \right\|_X \end{split}\end{equation}
が成立します。このことから、 の定義に注意すれば、 ならば上の式、 ならば下の式からそれぞれ連続性が確認できます。ゆえに です。
さて、ここで はcompactだったから、特に はcompactであることが分かります。さらに、 です。実際、 ならば ですが、このとき に注意して、
\begin{equation} \left.g_k^*(x)\right|_{\|x\|_X=1}=\left.g\left(\frac{x}{\|x\|_X},k(1-\|x\|_X)\right)\right|_{\|x\|_X=1}=g(x,0)=0 \end{equation}
を得ます。したがって です。
さて、このとき は(ii)の仮定を満たしています。すなわち、 かつ はcompactかつ です。したがって不動点が存在します。いま関数列 を考えていることに注意して、対応する不動点を とし、 としておきます。ここで、この に対して
\begin{equation} s_k=\left\{\begin{array}{cl} k(1-\|x_k\|_X) & \text{if} \quad 1-\frac{1}{k} \le \|x_k\|_X \le 1 \\ 1 & \text{if} \quad \|x_k\|_X \lt 1-\frac{1}{k} \end{array}\right. \end{equation}
とおくと、 であり、したがって点列 が得られます。さて、 はcompactですから、適当な部分列 を選べば収束します。この極限を と書きます。
さて、このとき実は が成立しています。実際、もし であったとすると、 の定義から十分大きな に対しては常に
\begin{equation} 1-\frac{1}{k_j} \le \|x_{k_j}\|_X \le 1 \end{equation}
が成立します。このとき は定義から
\begin{equation} x_{k_j}=g_{k_j}^*(x_{k_j})=g\left(\frac{x_{k_j}}{\|x_{k_j}\|_X},k_j(1-\|x_{k_j}\|_X)\right)=g\left(\frac{x_{k_j}}{\|x_{k_j}\|_X},s_{k_j}\right) \end{equation}
を満たしていますが、 とすれば であり、上の評価から を得ます。したがって から の成立が分かります。ところが、初めの仮定から、 が成立するならば常に を満たさなければならないので、これは矛盾です。ゆえに となります。
したがって、再び の定義から、十分大きな に対して常に
\begin{equation} \|x_{k_j}\|_X \lt 1-\frac{1}{k_j} \end{equation}
が成立し、 は定義から
\begin{equation} x_{k_j}=g_{k_j}^*(x_{k_j})=g\left( \frac{k_jx_{k_j}}{k_j - 1},1 \right) \end{equation}
となります。再び に注意して とすれば を得ます。これが不動点になります。
さて、後は
\begin{equation} g(x,\lambda)=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}
であったから、
\begin{equation} f(Mx,1)=Mg(x,1)=Mx \end{equation}
となり が求める不動点になります。
以上がLeray-Schauderの不動点定理です!!Schauderの不動点に基づいているので、そこまで証明は難しくないと思います。なお証明はGilbarg-Trudingerの「Elliptic Partial Differential Equations of Second Order」にあったものを参考にしました。
ちなみに、この定理においては写像を として考えたわけですが、この特別な例として を考えることができます。これをLeray-Schauderの不動点定理という場合もあります。そのように書き換えると、次のような主張になります。
をBanach空間とします。ここで、写像 はcompactであり、かつ次を満たすとします。
ある が存在して、 を満たすような任意の に対して が成立する
このとき、 は不動点を持ちます。すなわち、 なる が存在します。
これで今回の記事はおしまいです。見てくださってありがとうございます。