Leray-Schauderの不動点定理について

こんにちは。ひよこてんぷらです。今回はまた不動点定理をやります。

 

前回はSchauderの不動点定理をやりました。

 

sushitemple.hatenablog.jp

 

これは、norm空間 X とその空でない凸部分集合 \Omega \subset X およびcompactな部分集合 K \subset \Omega を考えるとき、任意の f \in C(\Omega:K) に対して f(x)=x なる x \in \Omega が存在する、という不動点定理のことでした。

 

この不動点定理からさらにLeray-Schauderの不動点定理を示すことができます。今回はこれをやります。

 

さて、まずはcompactな写像の定義を与えます。

 

集合 X,Y に対する写像 f \in C(X:Y) がcompactであるとは、任意の有界集合 \Omega \subset X に対して \overline{f(\Omega)} がcompactとなることと定義します。ここでcompactとは、 Y でcompactということです。もちろん、 \overline{f(\Omega)} \subset Y となります。 

 

この定義を用いて、Leray-Schauderの不動点定理の主張を述べます。

 

X をBanach空間とします。ここで、写像 f \in C(X \times [0,1]:X) はcompactであり、かつ任意の x \in X に対して f(x,0)=0 とします。さらに、次を満たすとします。

 

ある M \gt 0 が存在して、 x=f(x,\lambda) を満たすような任意の  (x,\lambda) \in X \times [0,1] に対して \|x\|_X \lt M が成立する

 

このとき、 f(\cdot,1)不動点を持ちます。すなわち、 f(x,1)=x なる x \in X が存在します。

 

これがLeray-Schauderの不動点定理です。写像に関する仮定は強いですが、凸集合でなくても主張が成立します。これを示すために、次のステップに分けて考えましょう。

 

(i) 有界な凸閉集合 \Omega \subset X に対して f \in C(\Omega:\Omega) がcompactであれば、 f不動点を持つ

(ii) B = \{y \in X \mid \|y\|_X \lt 1\} に対して、 f \in C(\overline{B}:X) かつ \overline{f(\overline{B})} はcompactかつ f(\partial B) \subset B ならば、 f不動点を持つ

(iii) Leray-Schauderの不動点定理が成立する

 

では早速(i)から見ていきます。(i)に関してはSchauderの不動点定理から容易に示されます。実際、 \Omega \subset X有界な凸閉集合ですから、写像のcompact性から \overline{f(\Omega)} がcompactになることより、写像 ff \in C(\Omega:\overline{f(\Omega)}) とみることで、Schauderの不動点定理が使えます。したがって不動点の存在が示されます。

 

次に(ii)を示しましょう。さて、 f \in C(\overline{B}:X) に対して f^*

\begin{equation} f^*(x) =\left\{\begin{array}{cc} f(x) & \text{if} \quad \|f(x)\|_X \le 1 \\ f(x)/\|f(x)\|_X & \text{if} \quad \|f(x)\|_X \gt 1 \end{array}\right. \end{equation}

と定義すると、 f^* \in C(\overline{B}:\overline{B}) となります。実際、 x \in \overline{B} に対して \|f(x)\|_X \le 1 ならば

\begin{equation} \|f^*(x)\|_X =\|f(x)\|_X \le 1 \end{equation}

また \|f(x)\|_X \gt 1 ならば

\begin{equation} \|f^*(x)\|_X =\left\|\frac{f(x)}{\|f(x)\|_X}\right\|_X = \frac{\|f(x)\|_X}{\|f(x)\|_X}=1 \end{equation}

より常に \|f^*(x)\|_X \le 1 であり、したがってこれは f^*(x) \in \overline{B} を意味します。

 

次に連続性について、これは f \in C(\overline{B}:X) およびnormの連続性から分かります。念のため \|f(x)\|_X=1 周りでの連続性をチェックしておきましょう。 \|f(x_0)\|_X=1 なる  x_0 \in \overline{B} に対して

\begin{equation} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X=\|f^*(x)-f(x_0)\|_X \end{equation}

が成立するわけですが、もし \|f(x)\|_X \le 1 ならば

\begin{equation} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X=\|f(x)-f(x_0)\|_X \end{equation}

より f \in C(\overline{B}:X) から連続であることが分かります。一方 \|f(x)\|_X \gt 1 ならば

\begin{equation}\begin{split} \|f^*(x)-f^*(x_0)\|_X &=\left\| \frac{f(x)}{\|f(x)\|_X}-f(x_0) \right\|_X \\ &=\left\| \frac{f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)}{\|f(x)\|_X} \right\|_X \\ &=\frac{\|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X}{\|f(x)\|_X} \\ &\lt \|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \end{split}\end{equation}

となります。さて、いま \|f(x_0)\|_X=1 であるから、

\begin{equation}\begin{split} &\|f(x)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \\ &=\|f(x)-f(x_0)+f(x_0)-\|f(x)\|_Xf(x_0)\|_X \\ &\le \|f(x)-f(x_0)\|_X+\left\| f(x_0)\left\{ 1-\|f(x)\|_X \right\}\right\| \\ &=\|f(x)-f(x_0)\|_X+\|f(x_0)\|_X\left| 1-\|f(x)\|_X \right| \\ &= \|f(x)-f(x_0)\|_X+\left| \|f(x_0)\|_X-\|f(x)\|_X \right| \\ &\le \|f(x)-f(x_0)\|_X+\|f(x_0)-f(x)\|_X \end{split}\end{equation}

よりこの場合でも連続であることが分かります。したがって \|f(x)\|_X=1 周りでも連続で、 f^* \in C(\overline{B}:\overline{B}) を得ます。また、仮定から \overline{f(\overline{B})} はcompactなので、 \overline{f^*(\overline{B})} もcompactです。

 

ここで、(i)を使います。すなわち、有界な凸閉集合 \overline{B} \subset X に対して f^* \in C(\overline{B}:\overline{B}) であるから、不動点の存在がいえます。したがって f^*(x)=x なる x \in \overline{B} が存在します。

 

最後に、これが不動点であることを示します。まず、  x \in B であるとします。このとき \|f^*(x)\|_X=\|x\|_X \lt 1 となります。いま、 \|f(x)\|_X \gt 1 であるとすると、 f^* の定義から、 \|f^*(x)\|_X=1 を得ますがこれは矛盾です。すなわち \|f(x)\|_X \le 1 で、再び f^* の定義から x=f^*(x)=f(x)不動点であることが分かります。一方で、 x \in \partial B であるとすると、仮定から f(\partial B) \subset B ですから f(x) \in B すなわち \|f(x)\|_X \lt 1 で、やはり先と同じ結論を得ます。ゆえに(ii)が示されました。

 

最後に、Leray-Schauderの不動点定理を示しましょう。まずは初めの仮定である

 

ある M \gt 0 が存在して、 x=f(x,\lambda) を満たすような任意の  (x,\lambda) \in X \times [0,1] に対して \|x\|_X \lt M が成立する

 

という条件を M=1 に正規化します。このためには、 f に対して g

\begin{equation} g(x,\lambda)=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}

と定義すればよいです。実際、  (x,\lambda) \in X \times [0,1]x=g(x,\lambda) を満たすとき、 g の定義から

\begin{equation} x=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}

すなわち Mx=f(Mx,\lambda) を得ます。このとき上の仮定から \|Mx\|_X \lt M すなわち \|x\|_X \lt 1 を得ます。また、仮定より写像 f \in C(X \times [0,1]:X) はcompactですが、 g も同様の性質を持ちます。また、 f(x,0)=0 より

\begin{equation} g(x,0)=\frac{1}{M}f(Mx,0)=0 \end{equation}

に注意します。

 

さて、まずは g不動点を求めましょう。任意の正の整数 k および x \in \overline{B} に対して

\begin{equation} g_k^*(x)=\left\{\begin{array}{cl} g\left(\frac{x}{\|x\|_X},k(1-\|x\|_X)\right) & \text{if} \quad 1-\frac{1}{k} \le \|x\|_X \le 1 \\ g\left( \frac{kx}{k - 1},1 \right) & \text{if} \quad \|x\|_X \lt 1-\frac{1}{k} \end{array}\right. \end{equation}

と定義します。このとき、 g_k^* \in C(\overline{B}:X) が成立します。 g \in C(X \times [0,1]:X) なのでnormの連続性と合わせれば連続性はいえそうです。念のため \|x\|_X = 1-\frac{1}{k} 周りでの連続性を確かめましょう。 \|x_0\|_X = 1-\frac{1}{k} なる x_0 \in \overline{B} に対して

\begin{equation}\begin{split} \|g_k^*(x)-g_k^*(x_0)\|_X &=\left\| g_k^*(x)-g\left(\frac{x_0}{\|x_0\|_X},k(1-\|x_0\|_X)\right) \right\|_X \\ &=\left\| g_k^*(x)-g\left(\frac{kx_0}{k - 1},1\right) \right\|_X \end{split}\end{equation}

が成立します。このことから、 g_k^* の定義に注意すれば、 1-\frac{1}{k} \le \|x\|_X \le 1 ならば上の式、 \|x\|_X \lt 1-\frac{1}{k} ならば下の式からそれぞれ連続性が確認できます。ゆえに g_k^* \in C(\overline{B}:X) です。

 

さて、ここで g \in C(X \times [0,1]:X) はcompactだったから、特に \overline{g_k^*(\overline{B})} はcompactであることが分かります。さらに、 g_k^*(\partial B)=\{0\} です。実際、 x \in \partial B ならば \|x\|_X=1 ですが、このとき g(x,0)=0 に注意して、

\begin{equation} \left.g_k^*(x)\right|_{\|x\|_X=1}=\left.g\left(\frac{x}{\|x\|_X},k(1-\|x\|_X)\right)\right|_{\|x\|_X=1}=g(x,0)=0 \end{equation}

を得ます。したがって g_k^*(\partial B)=\{0\} \subset B です。

 

さて、このとき g_k^* は(ii)の仮定を満たしています。すなわち、 g_k^* \in C(\overline{B}:X) かつ \overline{g_k^*(\overline{B})} はcompactかつ g_k^*(\partial B) \subset B です。したがって不動点が存在します。いま関数列 \{g_k^*\} を考えていることに注意して、対応する不動点x_k \in \overline{B} とし、 g_k^*(x_k)=x_k としておきます。ここで、この x_k に対して

\begin{equation} s_k=\left\{\begin{array}{cl} k(1-\|x_k\|_X) & \text{if} \quad 1-\frac{1}{k} \le \|x_k\|_X \le 1 \\ 1 & \text{if} \quad \|x_k\|_X \lt 1-\frac{1}{k} \end{array}\right. \end{equation}

とおくと、 0 \le s_k \le 1 であり、したがって点列 \{(x_k,s_k)\} \subset \overline{B} \times [0,1] が得られます。さて、 \overline{B} \times [0,1] はcompactですから、適当な部分列 \{(x_{k_j},s_{k_j})\} \subset \overline{B} \times [0,1] を選べば収束します。この極限を (x,s) \in \overline{B} \times [0,1] と書きます。

 

さて、このとき実は s=1 が成立しています。実際、もし s \lt 1 であったとすると、 s_{k_j} の定義から十分大きな j に対しては常に

\begin{equation} 1-\frac{1}{k_j} \le \|x_{k_j}\|_X \le 1 \end{equation}

が成立します。このとき g_{k_j}^* は定義から

\begin{equation} x_{k_j}=g_{k_j}^*(x_{k_j})=g\left(\frac{x_{k_j}}{\|x_{k_j}\|_X},k_j(1-\|x_{k_j}\|_X)\right)=g\left(\frac{x_{k_j}}{\|x_{k_j}\|_X},s_{k_j}\right)  \end{equation}

を満たしていますが、 j \to \infty とすれば \|x_{k_j}-x\|_X \to 0 であり、上の評価から \|x\|_X=1 を得ます。したがって g \in C(X \times [0,1]:X) から x=g(x,s) の成立が分かります。ところが、初めの仮定から、 x=g(x,s) が成立するならば常に \|x\|_X \lt 1 を満たさなければならないので、これは矛盾です。ゆえに s=1 となります。

 

したがって、再び s_{k_j} の定義から、十分大きな j に対して常に

\begin{equation} \|x_{k_j}\|_X \lt 1-\frac{1}{k_j} \end{equation}

が成立し、 g_{k_j}^* は定義から

\begin{equation} x_{k_j}=g_{k_j}^*(x_{k_j})=g\left( \frac{k_jx_{k_j}}{k_j - 1},1 \right) \end{equation}

となります。再び g \in C(X \times [0,1]:X) に注意して j \to \infty とすれば x=g(x,1) を得ます。これが不動点になります。

 

さて、後は

\begin{equation} g(x,\lambda)=\frac{1}{M}f(Mx,\lambda) \end{equation}

であったから、

\begin{equation} f(Mx,1)=Mg(x,1)=Mx \end{equation}

となり Mx が求める不動点になります。

 

以上がLeray-Schauderの不動点定理です!!Schauderの不動点に基づいているので、そこまで証明は難しくないと思います。なお証明はGilbarg-Trudingerの「Elliptic Partial Differential Equations of Second Order」にあったものを参考にしました。

 

ちなみに、この定理においては写像f(x,\lambda) として考えたわけですが、この特別な例として f(x,\lambda)=\lambda f(x) を考えることができます。これをLeray-Schauderの不動点定理という場合もあります。そのように書き換えると、次のような主張になります。

 

X をBanach空間とします。ここで、写像 f \in C(X:X) はcompactであり、かつ次を満たすとします。

 

ある M \gt 0 が存在して、 x=\lambda f(x) を満たすような任意の  (x,\lambda) \in X \times [0,1] に対して \|x\|_X \lt M が成立する

 

このとき、 f不動点を持ちます。すなわち、 f(x)=x なる x \in X が存在します。

 

これで今回の記事はおしまいです。見てくださってありがとうございます。