非整数次微積分学の真相に迫る!!Part5

こんにちは。ひよこてんぷらです。なんやかんやでPart5まで来てしまいました。正直そんなに深く掘り下げるつもりはなかったのですが、なんか勉強してみるとあれもこれも面白そうだな~となっていろいろ調べてしまい、その段階ではまだあいまいな点も多いんですが、ブログにまとめようと詳細な論理を組み立てていると意外な発見が見つかったりしてそれも書き加えて……みたいな感じでけっこう大作になってしまいました(笑)。さて、では今回は何をするのかというと、微分公式を用いて、Fractionalな微分方程式を解いてみたいと思います!!前回の記事はこちらです。

sushitemple.hatenablog.jp

さて、とはいえいきなりどういうこと??と思うかもしれませんので、きっかけをお話ししたいと思います。"Introduction to Fractional Differential Equations"によれば、こんな例がありました。以下簡単のために

\begin{align} \left( \frac{d}{dx} \right)^{\alpha}f(x)=D_x^{\alpha}f(x) , \ \frac{d}{dx} f(x)=f'(x) \end{align}

などといった略記を用いることにしましょう。ちなみにFractionalな微分方程式はODEやPDEと同じようにFDEと呼ぶそうです。では例を紹介します。

 

次のFDEを1階ODEに変形せよ(  a=0 とする)。

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=-2\sqrt{\pi} \end{align}

さて、どのように解くかですが、あの微分公式を使うわけです。

\begin{align} \left( \frac{d}{dx} \right)^{\alpha}\left( \frac{d}{dx} \right)^{\beta}f(x)=\left( \frac{d}{dx} \right)^{\alpha +\beta}f(x)-\sum_{k=1}^{n+1}\frac{(x-a)^{-\alpha -k}}{\Gamma(1-\alpha -k)}\left\{ \lim_{x \to a} \left( \frac{d}{dx} \right)^{\beta -k}f(x) \right\} \end{align}

これも略記すると

\begin{align} D_x^{\alpha} D_x^{\beta}f(x)=D_x^{\alpha +\beta}f(x)-\sum_{k=1}^{n+1}\frac{(x-a)^{-\alpha -k}}{\Gamma(1-\alpha -k)}\left\{ \lim_{x \to a} D_x^{\beta -k}f(x) \right\} \end{align}

となります。さて今はこの公式に対し

\begin{align} \alpha =\beta =\frac{1}{2} , \ f(x)=y , \ a=0 \end{align}

を代入します。すると n=0 であり、

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}} D_x^{\frac{1}{2}}y=y'-\sum_{k=1}^{1}\frac{x^{-\frac{1}{2} -k}}{\Gamma(\frac{1}{2} -k)}\left\{ \lim_{x \to 0} D_x^{\frac{1}{2} -k}y \right\} \end{align}

となります。右辺第2項は k=1 のみであり、代入すると

\begin{align} -\frac{x^{-\frac{1}{2}-1}}{\Gamma(\frac{1}{2}-1)}\left\{ \lim_{x \to 0} D_x^{\frac{1}{2} -1}y \right\}=-\frac{x^{-\frac{3}{2}}}{\Gamma(-\frac{1}{2})}\left\{ \lim_{x \to 0} D_x^{-\frac{1}{2}}y \right\} \end{align}

ここで、

\begin{align} \Gamma \left( -\frac{1}{2} \right)=-2\sqrt{\pi} \end{align}

だったことを思い出すと、初期条件

\begin{align} \lim_{x \to 0} D_x^{-\frac{1}{2}}y= \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=-2\sqrt{\pi} \end{align}

と合わせて、右辺第2項は

\begin{align} -\frac{x^{-\frac{3}{2}}}{\Gamma(-\frac{1}{2})}\left\{ \lim_{x \to 0} D_x^{-\frac{1}{2}}y \right\}=-x^{-\frac{3}{2}} \end{align}

となることが分かります。したがって、微分公式は

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}} D_x^{\frac{1}{2}}y=y'-x^{-\frac{3}{2}} \end{align}

となることが分かりました。さて、これをどうするのかというと、FDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

に対し両辺を半微分します。すると

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y=D_x^{\frac{1}{2}}y \end{align}

となります。左辺は先ほどの微分公式の結果を代入することで

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}} D_x^{\frac{1}{2}}y=y'-x^{-\frac{3}{2}} \end{align}

となります。そして右辺はFDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

を再び代入することで、両辺のFractionalな微分作用素を消去できます。得られるODEは

\begin{align} y'-x^{-\frac{3}{2}}=y \end{align}

です。これが答えですね。

 

さて、文献の例はここでおしまいになっているわけですが、ここで終わっていいのでしょうか??というのもせっかく解けるODEが与えられたわけですから自然と「このODEを解けば初めのFDEも解けたことになるんじゃないか!?」という期待が寄せられるわけです。すなわちそれはFDEが解けるということ!!せっかくFDEを題材としたわけですから、解いてみましょうよ!!というわけでここから先はFDEを解いていくことにしましょう。

 

さて、再びシチュエーションを振り返ってみます。いま

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=-2\sqrt{\pi} \end{align}

なるFDEが与えられましたが、変形して

\begin{align} y'-x^{-\frac{3}{2}}=y \end{align}

なるODEを得ました。ここから自然とこのODEを解けばFDEが解けるのではないかと思うわけです。せっかくだからこのODEを解いてみたいと思います。ではまず式を変形して

\begin{align} y'-y=x^{-\frac{3}{2}} \end{align}

としましょう。これはみなさんもよく知っている1階線形ODEです。まず同次形(右辺が 0 の場合)を解きましょう。これは計算するまでもなく

\begin{align} y=Ce^x \end{align}

ですね。ただし C積分定数とします。ではこれを定数変化法で解きます。すなわち

\begin{align} y=C(x)e^x \end{align}

として元のODEに代入します。左辺は

\begin{align} y'-y=\left\{ C(x)e^x \right\}'-C(x)e^x \end{align}

\begin{align} =C'(x)e^x+C(x)e^x-C(x)e^x \end{align}

\begin{align} =C'(x)e^x \end{align}

となりますから、

\begin{align} C'(x)e^x=x^{-\frac{3}{2}} \end{align}

となります。これを満たす C(x) を求めましょう。

\begin{align} C'(x)=x^{-\frac{3}{2}}e^{-x} \end{align}

ですから

\begin{align} C(x)=J[t^{-\frac{3}{2}}e^{-t}](x)=\int_0^x t^{-\frac{3}{2}}e^{-t} dt \end{align}

となるわけです。……アレ??なんだか嫌な予感……これ、可積分じゃなくないですか……??原点付近で t^{-\frac{3}{2}} が嫌なふるまいをしてしまいます。というわけで残念ながらこれはダメなようです……なるほど、なぜ文献ではODEを導くだけで解かないのかが分かりました!!解けないからか!!(笑)

 

しかしこのまま解けないで終わるのもなんだか嫌な感じなので、何とかして解きましょう!!なぜ解けなかったのかというと、先ほどの例は原点での特異点が原因でした。すなわちそれはRiemann-Liouville積分の下端 a=0 が原因なのではないかと予想しました。そういうわけで、次はFDEを一般の a で考えてみたいと思います。

 

さて、では再びFDEを書いておきます。今度は

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=-2\sqrt{\pi} \end{align}

という条件で挑んでみます。得られるODEは、先と全く同様にして得られます。先との違いは微分公式の第2項の a が消去されないだけなので、得られるODEは

\begin{align} y'-y=(x-a)^{-\frac{3}{2}} \end{align}

となります。これも先と全く同じようにして、同次形の解

\begin{align} y=Ce^x \end{align}

に定数変化法を用います。

\begin{align} C'(x)e^x=(x-a)^{-\frac{3}{2}} \end{align}

を解くことになります。

\begin{align} C'(x)=(x-a)^{-\frac{3}{2}}e^{-x} \end{align}

……なんだか嫌な予感がしますね。

\begin{align} C(x)=J[(t-a)^{-\frac{3}{2}}e^{-t}](x)=\int_a^x (t-a)^{-\frac{3}{2}}e^{-t} dt \end{align}

あらら。やっぱりダメです。先ほどは a=0 のせいで原点が特異点になってしまうと書きましたが、一般の a にしても結局特異点もズレて可積分でないという結果になってしまいました。すなわちこのFDEも解けません……

 

この原因を調べましょう。結局 a=0 にしても一般の a にしても、原因は a 付近のふるまいなわけです。そして公式

\begin{align} D_x^{\alpha} D_x^{\beta}f(x)=D_x^{\alpha +\beta}f(x)-\sum_{k=1}^{n+1}\frac{(x-a)^{-\alpha -k}}{\Gamma(1-\alpha -k)}\left\{ \lim_{x \to a} D_x^{\beta -k}f(x) \right\} \end{align}

を見ると、右辺第2項の和は

\begin{align} (x-a)^{-\alpha -k} \end{align}

という部分があります。  k \ge 1 ですから必ずこの項が存在すれば特異点になっちゃうわけです!! \frac{1}{x-a} より強いふるまいをしてほしくないですからね。

 

じゃあ思い切った解決策として、この項を消去してしまってはどうでしょうか!!

\begin{align} \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

としてしまいましょう。そうすれば微分公式の和の項は 0 になり、特異点が存在しなくなるのではないでしょうか??すなわち、次のFDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

を解きます。この場合は微分公式の和の項は出てこないので

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y=y' \end{align}

となります。したがって先と同様にすれば、得られるODEは

\begin{align} y'-y=0 \end{align}

となります。これなら確かに解けます!!いやはや良かった……解は

\begin{align} y=Ce^x \end{align}

ですね。しかしここで満足してはいけません。ちゃんと今得られた解が元のFDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

を満たすか確認する必要がありますからね。ではまず

\begin{align} \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

が成立するか確認していきましょう。まずは半積分を計算します。

\begin{align} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=\frac{1}{\Gamma(\frac{1}{2})}\int_a^x y(t)(x-t)^{\frac{1}{2}-1} dt \end{align}

\begin{align} =\frac{1}{\sqrt{\pi}}\int_a^x \frac{Ce^t}{\sqrt{x-t}} dt \end{align}

さて、ここで置換積分しましょう。

\begin{align} \sqrt{x-t}=u \end{align}

とすると

\begin{align} t=x-u^2 \end{align}

であり

\begin{align} dt=-2udu \end{align}

となります。したがって

\begin{align} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=\frac{1}{\sqrt{\pi}} \int_{\sqrt{x-a}}^0 \frac{Ce^{x-u^2}}{u}(-2udu) \end{align}

\begin{align} =\frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du \end{align}

さて、この積分は初等関数では表せませんから、ここまでで計算はおしまいです。さて、何を調べたかったのかというと

\begin{align} \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

かどうかということです。確かに上の式を見れば、 x=a のとき積分範囲が上端と下端で一致します。しかも被積分関数x を含みませんから、これは 0 になると見て良いでしょう。したがってこの条件はクリアです。

 

では次に

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

の成立を確認していきましょう。左辺の半微分を計算すればよいわけですが、

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=D_xJ^{\frac{1}{2}}[y](x) \end{align}

ですから、既に計算した半積分微分すればよいわけですね。したがって、

\begin{align} D_xJ^{\frac{1}{2}}[y](x)=\left( \frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du \right)' \end{align}

\begin{align} =\frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du+\frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}} e^{-(x-a)} \frac{1}{2\sqrt{x-a}} \end{align}

\begin{align} =\frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du+\frac{Ce^a}{\sqrt{\pi (x-a)}} \end{align}

となります。……アレ??もともと

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

の成立を確認したかったわけですが、この結果から

\begin{align} \frac{2Ce^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du+\frac{Ce^a}{\sqrt{\pi (x-a)}}=Ce^x \end{align}

となってしまいました。これ、明らかに成立しなくないですか!?!?じゃあ、これも解がないってことなんでしょうか??

 

……と、いろいろ考えてみたんですが、ふとあることに気付きました。

 

C=0 の場合は成立する!!

 

C=0 ならば両辺共に 0 となって成立します。したがって y \equiv 0 は解になるということです。そして逆に C \neq 0 ならば成立しません。というのも上式の両辺を C で割ると

\begin{align} \frac{2e^x}{\sqrt{\pi}}\int_0^{\sqrt{x-a}}e^{-u^2}du+\frac{e^a}{\sqrt{\pi (x-a)}}=e^x \end{align}

となるわけですが、これだと左辺の積分が初等関数で表せることになってしまうからです。先ほども書いたようにこれは初等関数では表せないはずなので、これは明らかな矛盾です。したがって C=0 すなわち  y \equiv 0 のみが解ということになります。

 

そういうわけで、FDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y , \ \lim_{x \to a} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

の解は y \equiv 0 という自明な解のみになってしまいました。もともと何とかして解けるFDEを構成しよう!!という試みだったんですが、まさか自明な解のみになってしまうとは……もちろん、まだ解の一意性は示していないので他にも解がある可能性はありますが、おそらく、なんとなくですがこの場合は解は y \equiv 0 のみな気がします……というわけでこれも失敗……

 

さて、では気持ちを切り替えて別のFDEを考えてみましょう!!

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

はダメだったので、他にも何か項を加えて

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=f(x) \end{align}

というタイプのFDEを考えてみましょう!!これならどうだろうか??以下簡単のため a=0 として考えることにします。ではまず

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=x , \ \lim_{x \to 0}J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

というFDEを考えてみましょう。ここでも

\begin{align} \lim_{x \to 0}J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

としていますから、先と同様の理由により

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y=y' \end{align}

と計算できることに注意しましょう。さてではFDEの両辺を半微分しましょう。

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y+D_x^{\frac{1}{2}}y=D_x^{\frac{1}{2}}x \end{align}

となります。まず左辺第1項は

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y=y' \end{align}

となりますね。第2項は再び元のFDEを変形して

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=x-y \end{align}

を代入することで消去できます。では右辺はどうかというと、 x の半微分ですね。この結果は

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}x=2\sqrt{\frac{x}{\pi}} \end{align}

でしたね。覚えていますか??もちろん忘れていても

\begin{align} D_x^{\alpha} x^{\beta} =\frac{\Gamma(\beta+1)}{\Gamma(\beta -\alpha +1)}x^{\beta -\alpha} \end{align}

から求められます。したがって、FDEは

\begin{align} y'+x-y=2\sqrt{\frac{x}{\pi}} \end{align}

すなわち

\begin{align} y'-y=-x+2\sqrt{\frac{x}{\pi}} \end{align}

となります。これも同次形の解から定数変化法で求められます。まず同次形の解

\begin{align} y=Ce^x \end{align}

に定数変化法を用いることで、

\begin{align} C'(x)=-xe^{-x}+2\sqrt{\frac{x}{\pi}}e^{-x} \end{align}

ゆえに

\begin{align} C(x)=-\int_0^x te^{-t} dt+\frac{2}{\sqrt{\pi}} \int_0^x \sqrt{t}e^{-t}dt \end{align}

となりました。一応解は求められそうですが、右辺第2項が初等関数で表せなさそうなので、ちょっと初めの例にしては難しいかな……

 

というわけで、解が初等関数で表せそうな例を考えてみましょう。さっきは x を半微分してしまったから \sqrt{x} を含む項が出てきてしまったので、今度はこういう例でやってみましょう。FDE

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=\frac{1}{\sqrt{x}} , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y]=0 \end{align}

を解いてみましょう。同じように両辺を半微分して

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y+D_x^{\frac{1}{2}}y=D_x^{\frac{1}{2}} \frac{1}{\sqrt{x}} \end{align}

 x^{-\frac{1}{2}}C(\frac{1}{2}) constantであることに注意すれば、上の式は

\begin{align} y'+\frac{1}{\sqrt{x}}-y=0 \end{align}

すなわち

\begin{align} y'-y=-\frac{1}{\sqrt{x}} \end{align}

となります。あら、これも初等関数じゃ無理っぽいですね……定数変化法を使うと

\begin{align} C(x)=-\int_0^x \frac{1}{\sqrt{t}}e^{-t} dt \end{align}

となってしまいます。うーむ……簡単なFDEの例を構成するのがこんな難しいとは……

 

では逆に簡単なFDEの例を構成するため、 f(x) をそのままにして計算してみましょう。

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=f(x) , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

として解を求め、初等関数で解が表せる f(x) を逆算する、という作戦でいきましょう。これも同様に両辺を半微分して

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}D_x^{\frac{1}{2}}y+D_x^{\frac{1}{2}}y=D_x^{\frac{1}{2}}f(x) \end{align}

ゆえに

\begin{align} y'+f(x)-y=D_x^{\frac{1}{2}}f(x) \end{align}

となり、得られるODEは

\begin{align} y'-y=-f(x)+D_x^{\frac{1}{2}}f(x) \end{align}

となります。定数変化法から

\begin{align} C(x)=-\int_0^x f(t)e^{-t} dt+\int_0^x \left\{ D_t^{\frac{1}{2}} f(t)\right\} e^{-t} dt \end{align}

となります。さて、これが初等関数で表せそうな f(x) を探したいわけですが、どうもこれはかなり難しそうであることが予想されます……というのも、そもそも簡単に半微分の計算できる f(x)x^{\beta} くらいだと思うんですが、

\begin{align} D_x^{\alpha} x^{\beta} =\frac{\Gamma(\beta+1)}{\Gamma(\beta -\alpha +1)}x^{\beta -\alpha} \end{align}

より

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}} x^{\beta} =\frac{\Gamma(\beta+1)}{\Gamma(\beta +\frac{1}{2})}x^{\beta -\frac{1}{2}} \end{align}

なわけです。一方、これに e^{-t} をかけて積分する際に初等関数で表されるためには x^{\beta} の指数 \beta が整数でないと困るわけです。しかし半微分の結果から x^{\beta -\frac{1}{2}} がアウトになってしまいます。というわけで x^{\beta} はダメそうです。では得られるODE

\begin{align} y'-y=-f(x)+D_x^{\frac{1}{2}}f(x) \end{align}

において

\begin{align} -f(x)+D_x^{\frac{1}{2}}f(x)=0 \end{align}

となるケースはどうでしょうか。それなら

\begin{align} y'-y=0 \end{align}

となり初等関数で解けるODEになります。しかしその場合は

\begin{align} -f(x)+D_x^{\frac{1}{2}}f(x)=0 \end{align}

すなわち

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}f(x)=f(x) \end{align}

を解く必要がありますが、これは先の

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y=y \end{align}

と同じFDEであり、解くのが無理(ODEの解が発散してしまう)もしくは自明な解 f(x) \equiv 0 となってしまうことが分かっています。 f(x) \equiv 0 とすると元のFDEは

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=0 , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

となってしまい、やはりこれも自明な解 y \equiv 0 になってしまうでしょう。

 

というわけで、どうも

\begin{align} D_x^{\frac{1}{2}}y+y=f(x) , \ \lim_{x \to 0} J^{\frac{1}{2}}[y](x)=0 \end{align}

のタイプのFDEも簡単に解くのは難しいことが分かってしまいました……いや~なかなか具体例を構成するのも難しいんですね……

 

というわけでまた別の例を考えてみることにしましょう。おそらくうまくいかない原因は D_x^{\frac{1}{2}}yy が同時に存在しているからダメなんじゃないでしょうか??そういうわけで、今度は D_x^{\frac{1}{2}}yD_x^{\frac{3}{2}}y で構成されるFDEを考えてみたらどうでしょうか??

 

とはいえこの段階で1万字に到達してしまったので、今回はこのくらいにしておきましょう。次回はうまく解けるFDEを紹介して実際に計算してみたいと思います。ではまたお会いしましょう。最後まで見てくださってありがとうございます。

 

次回の記事はこちらです。

sushitemple.hatenablog.jp